矢の沢の農園に向かう途中の町道脇の側溝にカモシカが蹲っているものを見つけた。至近距離でも逃げないのを訝ってよく見ると、このカモシカは左目の眼球が白く蝋のようになって明らかに失明している上に右目も負傷したらしく完全に塞がった状態で、つまり全盲状態で動けず、また目だけでなく口の周りや鼻等の皮膚・粘膜の裸部がことごとく膨れ上がって瘤こぶになり異常な状態であることが分かった。
あまりの無惨さに驚き明科支所に連絡すると、すでに同様の連絡があって今職員が現場に向かっていると言うのでその場で待つことにした。
待っている間に顔中に出来た瘤の状態を克明に写真に撮るとともに大町山岳博物館の宮野さんに報告すると、即座に『それはパラポックスと言う伝染病です』と言う答えが返って来た。説明によると、パラポックスは他の個体に感染する恐れがあるので隔離する必要があるのだが、長野県内にはそれを受け入れる施設がないので捕獲して隔離することは出来ず、結局は『山に追い返して天寿(?)を全うさせるしかない』とのことだった。この状態ではまともに生きていけるとは思えず、早晩死ぬしかないので『天寿を~』云々は矛盾だが、要するになるべく他の個体と接触しないで、ひっそりと死んでくれるのをのを待つしかないと言うことのようだ。
30分後に顔見知りの職員さんが来たので宮野さんから聞いたことと、地方事務所の林務科に連絡するようにとの言を伝えてその場を離れた。
首から後ろの部分は毛並みもきれいで健康そうな若いカモシカであっただけに気の毒で可哀想でいつまでも気になって仕方なかった。我々にできることは何もないと言う冷徹な事実を受け入れなければならないのはつらいことだ。
空気感染と書いてありましたが、直接触ると人にうつる危険性もあるそうです。ただし実際に人に感染した例はないとも・・。
野生の世界のも色んな病気や事例があるものですネ。