仙義梵(センガイギボン)という江戸後期の禅僧がいる。独特な洒脱な墨画を描いたことで知られる。こういう人だから、色紙などを多くの人から頼まれる。それをイヤとは言わずに書いている。ある日、家を新築したという人が、色紙に、縁起のよい言葉を書いてくれと頼みに来る。「あ~、よしよし。」と義梵禅師はいつものように快く引き受ける。その人が訪ねてきたのだから、たぶん、そんなこともあるだろうと心得ていたものだろう。すらすらと書き始める。「ぐるりっと家を取り巻く貧乏神・・・」ここで、禅師はおもむろに、その色紙を頼み人に見せる。いやな顔をする。そのいやな顔を見て、禅師はにやりとする。そして、続きを書く。「七福神は外に出られず。」頼み人の顔が急にうれしそうな顔になる。それを見て、禅師は自分の遊び心に喝采を送る。
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