あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

「半夏生」の生える頃

2010年07月05日 | うんちく・小ネタ

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                                                               7/1は半夏生(はんげしょう)。
半夏生は七十二候の一つでありかつ、雑節の一つにも数えられています。
昔は「半夏半作(はんげはんさく)」といい、この日までに田植えを終えられれば、なんとか平年作の半分の収穫は見込めるという田植え終了の時期の目安となっていました。

現在ではこうした実生活での節目としての役割は薄らぎ、そのちょっと不思議な名前から、「そう言えば・・・」と思い出される日になっています。
この日は天から毒気が降り山菜や筍などに宿るため、こうした物をとって食べるのを忌むとか、井戸に毒がしみ込むのを防ぐため蓋をしなければならないといった迷信がありました。
流石に今は信じている人はいないと思いますが、そうした慣習は残っているかも知れませんね。

                                                                ◇「半夏生ず」か「半夏生生ず」か
七十二候の半夏生の名前は元々は「半夏」という植物が生える(生ずる)ということです。半夏はカラスビシャク(烏柄杓)というサトイモの植物のことです。
   
  213632 カラスビシャク

                                                                   さて、本家の「半夏」はこの植物ですが近頃は、半夏生というと「半夏生」という名前の植物が紹介されることが多くなっています。

 23167 半夏生   
                                                                こちらはドクダミの仲間の植物です。この植物は夏の頃花を咲かせるのですが、花が咲く頃になると葉っぱの白化現象ということが起こり、緑色の葉っぱが付け根から半分ほど白くなってしまいます。この白くなったところがまるで白粉を塗ったかのようだということで半分だけ化粧したもの、則ち

  半化粧(ハンゲショウ)

から、この白化現象が起こる時期とその発音との一致で「半夏生」と呼ばれるようになったのだとか。
ちょっと笑い話になりそうな話ではあるのですが、確かにこの「半夏生」の姿を見ればわからないでもないと思えます。

ただし残念なことにこの半分化粧した半夏生ですが、現在ではあまり見かけることがなくなってしまいました。

                                                                ◇半夏生の鯖・蛸・うどん                                             半夏生には、一部の地方では、この日に食べる物があります。                                                                    

                                                             ◇福井県の「半夏生鯖」
福井県では大野市を中心として半夏生には焼き鯖を食べる慣習があるそうです。これを称して「半夏生鯖(はんげしょうさば)」。

鯖といえば、庶民派青魚の代表。昔からよく食べられた魚ですが、料理の本など開くと、食べ頃は主に脂ののる秋とあります。半夏生の時期ではちょっと時季はずれかも知れませんね。

半夏生鯖の由来は、昔この地方を治めた大野藩の殿様が田植えが終わった時期に農民の労をねぎらうと共に、疲れた身体に滋養をつけるためと鯖を食べることを奨励した為だとか。
昔は、食事に魚がつく何ていうことは滅多にないことで、かなりの贅沢。この日ばかりは贅沢してもいいよと言うことなのでしょうか。

また田植え前は酒や魚肉を断って、物忌みするという風習もありましたから、もしかするとこの物忌み明けという区切りの意味もあったのかも・・。

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                                                              ◇京都の「蛸の日」
7/2 は「蛸の日」となっています。これは半夏生の時期には蛸を食べるという慣習があるということから生まれた記念日です。
 
なぜ半夏生に蛸を食べるようになったのかということについては、今のところ由来に関する情報がありません。

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                                                            ◇香川県では「うどんの日」
また、この日は「うどんの日」でもあります。
この日は、香川県生麺事業協同組合がうどんの消費拡大を狙って制定したもの。香川といえば讃岐うどんの本場。うどんの日も納得。ただ、なぜ半夏生に?

これに関しては、もしかしたらですが麦の収穫時期と関係しているかも知れません。麦は半夏生の前あたりに収穫されます。関東などでは麦の収穫を畑の神様に感謝するために収穫した麦から作った団子を供える行事がありましたから、それから類推すると、新麦から作ったうどんを祝いに食べるといったことが行われていたのではと思われます。

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  ☆…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆…

  7月7日で、このブログをスタートさせて1周年となりました。
  いつの間にか…という思いと、まだまだという複雑な想いが
  交差しながらも、温かいコメントに支えられた結果としての
  一年であったと、深く感謝しております。

  まだまだ未熟で未完な仕上がりばかりですが、BLOGの
  概念を何かひとつでも超えられるサイトに育てていきたいと
  念じています。どうか末永くご愛読戴けますよう、今後とも
  宜しくお願い致します。

  ☆…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆‥…━…‥☆…


154 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
京のほけん屋様 (NOいちご)
2010-07-05 04:02:16
京のほけん屋様
一周年記念、おめでとうございます。
そして、心から感謝申し上げます。
これからもずっと、私たちを感動と、
感激のサイトへ導いて下さい。
ただし、くれぐれも、お身体には
気を付けて下さいね。

動画!びっくりしました。
こんなことが出来るんですね。
すっごい!
さすが、京のほけん屋さんですね!

今回の写真も、いいですねぇ。
過去の記事を読みなおすというか、
写真を見直すというのか、
ずっと以前のものから見ていくと、
それぞれの時期の自分の過ごし方や、
あんなことがあったなとかの、
想い出が蘇って来ます。
このブログとともに自分の一年が
あると思うと、嬉しいです。

半夏生は、田植えの時期の目安
とも聞きますが、そうなのでしょうか。

それでは、二度寝しま~す。
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この時期は大雨が降るとか言われて (コーヒーミル)
2010-07-05 20:25:36
この時期は大雨が降るとか言われて
なかったでしょうか。
というか、7月のはじめ頃には、
気象庁でも、ほぼ例年雨量の多い
時期という判断をデータ的に持っている様子。
確かに、今年でいえば、九州地方
などは大雨で、土砂崩れも起きました。
世界的にも年々雨量が多くなっている
ように思うのですが・・。
災害の無い年ってないものですかねぇ。


スライド写真、素晴らしい!
しかも7枚も!
これほどの枚数でこの動きを完成させて、
しかも、写真ごとに加工も施されてとなると、
驚きの極みです。
これだけの加工は相当に、相当に、
大変だったはず!。
どこまでも凄いブログですね。

改めて感動しました。
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Unknown (星娘)
2010-07-05 21:59:39
京のほけん屋様
半夏生のころにオバケが出ると、
子供の頃に、おばあちゃんから
言われたことがありました。
おばあちゃんの家は代々からの
農家だったので、農業と関連し
てのお化けの話だったように記憶
しているのですが、その名も
「はんげ」だったような。
子供への冗談話だったら恥ずか
しいのですが(親族の恥?)
オバケが出るからこの時期は家の
中に閉じこもって外に出ちゃいかんと
言っていたように思います。

一周年の中で、京のほけん屋さん
のブログに、心が癒されたり、
支えられたりした回数は、
計り知れません。
動画の部分を見ながら、胸が熱く
なりました。

この一年、本当に有難うございました。
返信する
Unknown (南船場のおたんこナース)
2010-07-05 22:03:46
半夏生ですか!
本当に、京のほけん屋さんは
何でも、もの知りですね。
この言い方は、私はあることで
知ることになりました。
それは、入院患者さんの
ある意味での退院の際に、
ベッドを片づけ、ご家族に
忘れ物をお届しに行った際に、
この言葉を詠んだ句の栞を
見つけたのです。とても寂しい
とても悲しい響きのある句だったので、
記憶に留まっていました。

私の仕事で、一番嫌な立ち会い
となるシーン。
それとリンクするような感じでした。

返信する
七夕からこのブログはスタートされたんですねぇ。 (堺市のトンビ)
2010-07-05 22:17:39
七夕からこのブログはスタートされたんですねぇ。
1年、ご苦労様でした。
またこれからも、このブログで、私たちを
支えて下さい。
ずっと、この場所との出会いを楽しみにしています。

そうそう、7/7 は「ポニーテールの日」だそうです。
この「ポニーテールの日」とはどんな日かというと、
『1995年(平成7年)に日本ポニーテール協会が
制定。健康的でさわやかで、女性らしさを
アピールできる髪型のポニーテールは浴衣に
似合うなどの理由からこの日に。』

ザッとこんなものでございます。
まあ意味は分かりました(と書いておきながら、
本当は「なんだこれ?」と思っています・・・)が、
ではなぜ 7/7なんでしょう。

返信する
W杯が終わったら、G戦の視聴率も (腹立海苔)
2010-07-05 22:18:19
W杯が終わったら、G戦の視聴率も
アップかなと思ったら、そうでもない
らしいですなぁ。
BSでは放送してるようだけど、
地上波での放送が減ってしまって、
車の中でも観られないし、会社の
休憩室のTVでも観れない。
ラジオじゃぁ、いまひとつ盛り上がら
ないし、面白くない。
みんな、良かったらG戦観てくださいよ。
マルちゃんも慎之介も頑張ってるし、
長野なんか、長島さん以来の
6月までのHR数10本を達成。
勝敗云々より、こうした話題、
てんこ盛りですから。
え?勝ち負け?!
そりゃぁ、Gが勝たなきゃ、飯まで
マズイけどね・・・。
半夏生は夏至でいうと、半分
以降になるのかな。いつまでなん
でしょう。
返信する
京のほけん屋様 (公務員の学校教師)
2010-07-05 22:56:58
京のほけん屋様
一周年、おめでとうございます。
これからも、こちらこそ
宜しくお願い致します。
同時に、ご無理のない一年をと、
心より願っております。
技術的な事は判りませんが、
動画の部分に感動致しました。
京のほけん屋さんらしい雰囲気にも、
魅了されています。

いつも上品で高貴な内容の
蘊蓄の記事を書かれている事に、
驚愕の思いでおります。

今回のテーマについて、調べた
範囲と、疑問とを書かせて戴き
ます。

7月2日ですが、七十二候の
半夏生の日になっています。
この日は昔の農家にとっては
大切な日で、田植えはこの日
までに済ませなければならな
かったそうです。
何故かと言うに、この日には
天から毒が降ったり、地に毒が
生じたりして良くないから、
山に入ってもいけないし、
野菜なども食べてはいけない
などの物忌みがあったからです。
まあこうした理由はともかくとしても、
半夏生は梅雨の終わり頃で、
太陽黄経が百度となる毎年の
気候の節目でした。
しかしこの半夏生、どうも語源が
はっきりしないようです。
というのも半夏生にはそれらしい
二つの植物があって、「半夏」
(別名からすびしゃく)という
サトイモ科の薬草と、「半夏生」
というドクダミ科の花が白くて、
葉っぱが半分だけ白くなる毒草
があって、どちらもこの時期の
植物なのです。
どっちが正しいかは私には分かり
ませんが、サトイモ科の半夏なら
「半夏が生じる」となり、これは
文章です。
しかしドクダミ科の「半夏生」では
ただの名詞になってしまうんですね。

返信する
田植えを終える目安で、 (シークレットアルバートアンド)
2010-07-05 23:30:39
田植えを終える目安で、
「チュウははずせ、ハンゲは待つな」
(多分・・)というような言葉が
あったと思います。
この言葉の意味を教えて下さい。
京のほけん屋さんの知識や
文章力には脱帽です。
もう、これだけの最高のグレードの
記事が連載されると判っていても、
それでも、毎回、びっくりさせられて
います。
写真も、相当にコストをかけて
いるはず。
労働時間と、こうしたコストを計算
したら、年間でびっくりする額に
なるでしょうね。
特に労働時間はすごい訳ですから・・。
マンション買えそうだろうなぁ。

スライドいいですねぇ。
思わず、デジカメの動画録りを
してしまいました。
ずっと残します!
返信する
物忌みが守られていた日でも、 (駅スパート)
2010-07-05 23:42:42
物忌みが守られていた日でも、
地域的にそれぞれ捉え方は
違っていたのでしょうか。
こういうお話は、少なくとも、
こうした記事を読まない限り、
知る術を持たない情報とも
言えそうです。
とても貴重で、とても日本人として
知っておくべき、或いは、
後世に伝えていくべき内容だと
思っています。
そんな大切なことを、このブログは
発信しているのです。
すごいですよね。
感激で、毎週、ドキドキものです。

一周年おめでとうございます!
返信する
NOいちご 様 (京のほけん屋)
2010-07-05 23:45:11
NOいちご 様
コメントに感謝致します。

半夏生に入る時期は、田植えに
最も適した時期だと言います。

「チュウ(夏至)ははずせ、ハンゲ(半夏生)は待つな」

ということわざがある程で、
田植えは夏至が済み、半夏生に入る前に
やることが好ましいようです。

半夏生の前に無事田植えを終えた
農家では、この日の天候で稲作の
豊凶を占ったり、田の神を祭ったりします。
雑節の中では唯一、七十二節気
(※)の「半夏生」からとられた名称です。

 ※七十二節気・・・二十四節気のように、
   一年を72に分けた暦です。
   二十四節気だけでは農作業の基準が
   分かりづらかったため、更に細かく分けた
   七十二節気が生まれたようです。

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