あんなこと こんなこと 京からの独り言

「京のほけん屋」が
“至高の薀蓄”を 京都からお届けします。

チョコレートは発酵食品

2011年11月14日 | うんちく・小ネタ

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                                                                日本の伝統食品は、その多くが発酵食品です。
味噌、醤油、酒、みりん、納豆、鮒寿司、かつお節…。
たまたま微生物に侵されてしまった貴重な食材を捨てずになんとか活用したいという日本人の知恵と、それを後押ししたのが温暖湿潤気候でしょう。

このような文化人類学的背景の帰結として、稲藁に包んだ煮豆が藁の菌で納豆になり、江戸に下したかつお節にかびが生えて枯節になりました。
それは、発酵食品は緻密で、粘り強くて、ちょっとだけアバウトな日本人の得意技だと思っていました。

しかし、熱帯地方にも世界に広がる発酵食品があったのです。

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なんと、チョコレートです。

厳密にはカカオ豆の発酵が灼熱の赤道直下で行われているということなのですが、恥ずかしながらチョコレートが発酵食品だとは知りませんでした。
しかも、熱帯地方での発酵。

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無知を反省しつつ、発酵過程を調べて見ました。
まず、ラグビーボール大のカカオの実「カカオポッド」から、カカオ豆とパルプを取り出します。
この時使用するナイフや農民の手、発酵設備の木箱とそれを覆うバナナの葉などに発酵菌(酵母、乳酸菌、酢酸菌)が常在していて、パルプの糖分を栄養源として4~7日間程度の発酵が進行。

発酵の目的は、香り付け、色付け(発酵前のカカオ豆は白い)、渋味と苦味の除去などですが、チョコレートメーカーの研究者をして「デタラメ」と言わしめたらしい熱帯地域のいい加減な発酵で、最終商品が規格内に収まるのは神業だそうです。

     2_2 

ちなみに、発酵以降の工程は気温が高すぎるとチョコレートが溶けてしまうため、温帯地方でしか行えないのだとか。

そもそも発酵は目に見えない微生物の仕事で、所詮はブラックボックスで謎に包まれた工程なのです。
しかし、それをコントロールして安全な加工食品に仕上げ、食卓に提供するのがメーカーの仕事。デタラメはまずいですが、ある程度のアバウトを受け入れる鷹揚さがないと、発酵食品は扱えないといえそうです。

   1_2 

ちょっとビターなチョコレートをかじりながら、はるか熱帯の微生物に思いを馳せたいと思った秋の夜でした。

 6_2 


137 コメント

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目からうろこのお話し。 (NOいちご)
2011-11-14 02:12:05
目からうろこのお話し。
チョコレートが発酵食品
だとは知りませんでした。
でも、工程を知るほどに
確かに発酵ですね。
このブログから日常の
何でもない事や常識などが
覆ったり、はじめて知ることが
出来たりで、とても貴重な
体験をさせて戴いています。
発酵食品である、アザラシの
中に海鳥を突っ込んで作る
のと、エイを発酵させた食品
の名前や特徴、作り方など
わかりますか?

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TVで、便秘にキムチが (寂しいITビジネスマン)
2011-11-14 18:47:55
TVで、便秘にキムチが
良いと放送してましたね。
それも、本格的な、塩辛
の入ったものが発酵食品で、
便秘に良いのだとも、いって
ました。
そこで、知りたいのは、
市販のキムチの素で作る
家庭のキムチは、発酵食品
なんでしょうか?
便秘に効くんでしょうか?

それにしても、本当に話題の
幅が広い!
ここに来るのが楽しくって仕方
ありません。
返信する
納豆やヨーグルト、チーズ、などの (千本鳥居)
2011-11-14 20:33:43
納豆やヨーグルト、チーズ、などの
発酵食品は、ある意味、菌で作ら
れた食品だと思うのですが、
なぜ賞味期限というものがあるの
でしょうか。

また、みそ、醤油なども
「ねかせて熟成させて」
つくられた商品なのですが、
なぜ賞味期限というものが
あるのでしょうか。

例えば、ワインなどは
「ねかせればねかせる」ほど
よいワインだとされ、年代物の
ワインは高級品で、ワインに
賞味期限ってなさそうな気がします。
なのに、発酵食品に賞味期限
があるのは不思議です。
返信する
いやぁ~、驚きました。 (G&G)
2011-11-14 20:41:19
いやぁ~、驚きました。
何気なくいつも食べている
チョコレートは、発酵していた
んですね。
このブログで驚かされることが
多くて、それがまた楽しくて
ここに来てしまいます。
五木さんや寂々さんのように
文壇のお方が褒めちぎる意味は、
こういう部分なのでしょうね。

水産発酵食品ってなにが
ありますか?
返信する
いきなりですが、私の愛読して (さーちゃん)
2011-11-14 21:19:09
いきなりですが、私の愛読して
いる、海街diary(吉田秋生作 
小学館刊行)の 2巻、「真昼の月」
から登場人物の会話の一部を
引用致させて頂きます。

(風太)何あれ・・・まさか・・・月?
(将志)ばーか、こんなまっ昼間に
月なんか出てるわけねーぺや
(風太)だってさ! ほら見ろよあれ!
(将志)えっ!?あっほんとだ! 
  うっそマジでぇー!? ありえねーっ
(すず)ン? あーホントだ
(風太)って お、おまえ驚かねーの!?
(すず)なんで? だって月って
    昼間も出てんじゃん
(風太・将志) え~~~っ?!
(すず)時間とか位置とか大きさ
   なんかで見えないこともあるけど
   月はちゃんと昼間だって出てるん
   だよ!

登場人物、風太(♂)・将志(♂)・
すず(♀)の三人はともに中学生。
サッカークラブ「湘南オクトパス」の
チームメイトという設定です。

漫画の中の会話ではありますが、
現実にもこれと似た会話をしたり、
されているのを耳にしたことは無い
でしょうか?
数少ないお客さんが先日、 
「昨日、日中だというのに月が
 見えた。
 いままで、日中に月が見えた
 ことなどなかったなぁ。
 なぜ突然、日中に月が見えた
 のだろう。
 なにか、特殊な現象がおこった
 のか? これからこの店にお客が
 押し寄せるってこと?」

といった驚きというか失礼な話を
聞きました。(涙)
お客さんにとっては「驚きの情景」
だったわけですが、私にとっても
「驚き」です。
日中に月が見えるものなので
しょうか。

返信する
NOいちご 様 (京のほけん屋)
2011-11-14 22:01:20
NOいちご 様
コメントに感謝致します。

アザラシはエスキモーの
伝統食品「キビヤック」
エイは韓国の発酵食品
「ホンタク」です。
Wikipediaに載っていました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%93%E3%83%A4%E3%83%83%E3%82%AF
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B4%AA%E6%BF%81

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寂しいITビジネスマン様 (京のほけん屋)
2011-11-14 22:40:08
寂しいITビジネスマン様
コメントに感謝致します。

作り方はどちらでしょうか。

1.自家製白菜漬けにキムチ
  の素を足す
2.キムチの素を切断生白菜
 にかけて1日程度おくだけ

1.は白菜の漬物が既に乳酸
  醗酵していますので乳酸食品
  です。
2.は乳酸醗酵しているかもしれ
  ませんが発行はほとんど進んで
  いないはず(亜硝酸菌などの
  雑菌が育っている場合が多い)
  です。

なお市販キムチの多くは、発酵
食品では有りません。
煮た白菜にキムチの素をあえた
だけのようなものです。
「わきぼうし」という、いったん暖め
て殺菌をして出荷しているからです。

返信する
千本鳥居様 (京のほけん屋)
2011-11-14 23:53:33
千本鳥居様
コメントに感謝致します。

納豆やヨーグルト(プレーン)、チーズ
などの発酵食品は、菌が生きて
います。
菌が生きているので、冷蔵保存
していても、多少は発酵が進みます。
時間の経った納豆は、タンパク分解
が進み、混ぜてるうちに豆が崩れる
ようになります。ヨーグルトであれば
酸っぱくなります。
また、醤油には菌は生きていません
が、徐々に香りが飛んだり、風味が
落ちてきたりして、永遠に同じ味が
保てるわけではありません。

科学的には、こんな説明になりま
すが...
要は製造元が、永遠に味を保証
できないということです。
日付が昭和の醤油持ち込まれて、
「味が変だから新しいのと交換しろ」
言われても困るでしょう。

ちなみにワインも際限なく古いほう
がよい訳ではありません。
ものにも拠るでしょうが、だいたい
20~30年を境に味が落ちてくる
と聞いたことがあります。

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G&G様 (京のほけん屋)
2011-11-15 01:10:17
G&G様
コメントに感謝致します。

塩辛;イカ塩辛、カツオ塩辛、ウニ塩辛、
    黒づくり、めふん、このわた、がん漬け、
    うるか、すくがらす、切り込み

乾製品;くさや

節;かつお節、サバ節

魚醤油;しょっつる、いしる、イカナゴ醤油

麹漬け;アユの麹漬け、ニシンの麹漬け、
     サバの麹漬け、エビの麹漬け

糠漬け;イワシの糠漬け、フグの糠漬け、
     へしこ

すし;フナずし、サバなれずし、ハタハタずし、
   アユなれずし、ニシンずし、くさりずし、
   サンマなれずし、かぶらずし
返信する
さーちゃん 様 (京のほけん屋)
2011-11-15 02:26:49
さーちゃん 様
コメントに感謝致します。

引用された海街diary の会話の中で、
すずがいったとおり、時間や位置や
大きさ(欠け具合)によって見えない
こともありますが、月は昼間でもちゃん
と出ているのです。
そして、時間や位置や大きさの条件
がそろえば、日中の青空の中に浮か
ぶ月が見えます。

条件がそろえばと書きましたが、
何も特別難しい条件ではなくて、空が
よく晴れていることと上弦の半月~
下弦の半月の間くらいのお月である
ことくらいの緩い条件です。
あとは見える位置と時間帯に気を
つけさえすれば、案外簡単に見える
のです。

見える位置と時間帯ということでいうと、

 ・上弦の半月~満月の間なら、
    時間帯  :見える時間帯は
           午後(月出時刻
           から日没時刻ま
           での間)
    見える位置:南~西の方向

 ・満月~下弦の半月の間なら、
    時間帯  :見える時間帯は
           午前(日出時刻
           から月没時刻ま
           での間)
    見える位置:南~西の方向

満月近くだと月出時刻と日没時刻が、
日出時刻と月出時刻が近いので
見えるのは夕方と朝方のの短い
時間帯だけとなりますので、ちょっと
「真昼の月」とは言いにくいですね。

夕方と朝方の短時間を「真昼」から
除くとすると、見える頃合いの月の
具合は、月齢で言えば

  7~11 , 19~23くらい

というのが大体の目安でしょう。


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