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ULTRAVOX / Quartet

2007年12月28日 23時27分17秒 | ROCK-POP
 この作品を忘れていた。ミッジ・ユーロの居たウルトラヴォックスというと、個人的には「ヴィエナ」と「エデンの嵐」の2作が印象深いのだけれど、どっこいこの82年に発表したサード・アルバム(通算では6作目)は大傑作である。なにしろプロデューサーにジョージ・マーティンというのが凄い。「エデンの嵐」というアルバムはレビューのところにも書いたけれど、セルフ・プロデュースという「自分等が見えない状態」というが災いしたのか、メリハリといい、ヴァリエーションといい、今一歩平板な印象をぬぐい去れたなかったのだが、おそらくそのあたりを反省したのだろう。同じEMIというメリットもあったのだろうが、ビートルズの音楽を売れるようにラッピングを施したジョージ・マーティンが起用されたのだ。

 実際のこのアルバムはよくできている。特に旧A面の4曲はマーティンによって彼らの魅力を上手に4曲に切り分けて、まるで「ベスト・オブ・ウルトラヴォックス」の如き雰囲気すら漂う。冒頭を飾る「Reap The Wild Wind」のストリング・シンセの乾いた響き、シーケンス・パターンの程よく後方に追いやり、ドラムスを全面に押し出したバランスなど、ポップなメロディー・ラインなど、既にテクノ・ポップを越えた突き抜けた明るさのようなものがあるし、「Serenade」は「New Europeans」タイプのダークな作品だが、これまたテクノっぽいリズムにとアコピからみが単調さを救い、実にメリハリのあるポップさを演出している。「Mine for Life」は、私の好きな「Passing Strangers」の続編のような曲で、中間部でドリーミーな展開になるのも同じで、本編ほどではないが、これも楽しめる作品だ。「Hymn」も傑作、ウルトラヴォックスのヨーロッパ的センスをややアンダーなトーンではなく、明るくまとめたところにマーティンのセンスを感じさせる。ジョージ・マーティンといえば、このアルバムのドラムがなぜか非常にリンゴ・スター的なノリを感じさせるのだが、これもマーティンの影響だろうか。

 旧B面の5曲はラストの「The Song」を除くと、A面の4曲に比べると若干落ちものの、「エデンの嵐」の諸曲に比べれば数段楽しめる仕上がりだ。という訳でこのアルバム全編に漂う明るさ、ポップさはおそらくジョージ・マーティン(そしてジェフ・エメリック)によって、解釈されたウルトラヴォックスという側面は否めないと思うけれど、なにしろここまで完璧に完成された音楽になってしまっては、バンド自身は何も文句はいえなかっただろう。ともあれ、ニュー・ウェイブからテクノ・ポップと進んでいったこのバンドのひとつの到達点がこのアルバムである。

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