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イョラン・セルシェル ギター・リサイタル

2009年05月14日 23時39分29秒 | クラシック(一般)
 5月12日に放送され、録画済みだった「イョラン・セルシェル・ギター・リサイタル」を今夜観た。曲目は「無伴奏チェロ組曲の1番と2番 ホ短調 BWV1008」と、私が目下もっとも頻繁に聴く曲「シャコンヌ」、そしてアンコール2曲という構成である。番組もとは、NHKのBS Hiで朝の6時からやっているクラシック倶楽部という番組だが、 N響を中心とした交響楽団の演奏会をメインとした「BSシンフォニー・アワー」に対して、こちらは室内楽だの声楽だのを中心とした小ホールの演奏会がメインのようだ。最近はこんなところまで録画する範囲を広げしまうと、なんだか「観るために録る」というより「録るために録る」みたいに録画が本当に目的化してきているようで少々可笑しい。

 さて、このイョラン・セルシェルというギタリストだが、もちろん初めて観る(聴く)人である。なんでもスウェーデン出身の54歳、11弦ギターを弾くのが特徴で、調べてみると天下のグラモフォンから何枚か出しているようので、リュートを模した11弦ギターだからルネッサンス&バロック期の音楽専門という訳でもなく、シューベルトだのビートルズ集なども出しているので、たぶんその世界では有名な人なのだろう。取り上げた曲は「無伴奏チェロ組曲」のギター版については、原曲そのものを知らないのでなんともいいかねるが、「シャコンヌ」は最近聴きまくっているせいもあって、これだけはじっくりと視聴してみたが、「シャコンヌ」のギター版は先日も書いた山下和仁にとは180度違うベクトルの編曲、演奏で、その対照振りはかなり興味深いものであった。

 セルシェルのギターは11弦ということもあると思うが、その音色が素朴で落ちついており、それに合わせるかのようにセルシェルも一音一音丹念に音を紡いでいくという印象である。前半のハイライト部分も夜叉の如きテンションで盛り上がるというよりは実に落ちいた表情に終始していて、作品を通じて自分の世界を開陳するというよりは、学究肌のミュージシャンによくあるように作品の姿をありのままに伝えるというか、作品に奉仕するタイプのミュージシャンのようであった。弾いている姿もけれん味のない自然体で、実に誠実そうな風情であり、観ていてすがすがしい気持ちになった。アンコールには母国の民謡だの、ビートルズの「ヒア・ゼア・アンド....」だったりしたが、これまた浮き足だったところのないしっとりしたもので、この音楽家の誠実さがよく伝わったものだったように思う。

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