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ワーグナー 「ニーベルングの指環」 管弦楽曲集/マゼール&BPO

2010年08月28日 23時09分21秒 | クラシック(一般)
 「ニーベルングの指環」の管弦楽曲集といえば、大抵は全曲盤から聴きどころを抜粋したものか、慣例的に独立して演奏されるいくつかのパートを集めたもののどちからだが、このアルバムはそのどちらでもない独自の構成をとっている。全曲から声楽抜きの聴きどころを集めている点は同じだし、選ばれているパートをそうかわらないものの、ユニークなのは全体が切れ目なく続く点で、さながら大きな組曲か交響詩のような体裁になっているのだ。
 このアダプテイションというか、編曲を行ったのは指揮のマゼール自身で、そもそもこの1987年にリリースされたこのアルバムのために作られたヴァージョンのようだ。彼はその後、これの続編として「タンホイザー」でも同種のアルバムを作っている。もっともレーベルはCBS、オケはベルリンではなくピッツバーグ響だったが…。

 構成としては、「ライン」は4パート約12分、「ワルキューレ」は5パート約15分、「ジークフリート」は4パート約7分半、そして「神々の黄昏」は6パートで35分となっていて、最初の3つの楽劇については、さしずめ主題提示部的な感じで比較的足早に進み、最後の「神々の黄昏」を事実上のハイライトとして、じっくりと聴かせる構成になっているといえる(そういえばN響で去年に取り上げられた「」)。
 冒頭は楽劇同様ライン河の水底のから始まるのがいい。いくら抜粋とはいえ、まがりなりにもアルバムとしてハイライト盤を聴いて、その冒頭が「ヴァルハラ城への神々の入城」では、いかにも興ざめな感じがしたので、きちんと冒頭が入っているのは大正解だと思ったものだ。ここから「神々の入場」、そしてニーベルハイム族の鍛冶屋の音へと繋がっていき、最後に雷神ドンナーに至るあたりの構成の妙は、なかなかのものである。
 このようにアルバム前半は3つの楽劇の名場面が走馬燈のように提示されていくが、ぶつ切りではなく全てが繋がっているという効果、統一感は絶大で、約70分でもって、とりあえず-本当にとりあえずだが-、この巨大な楽劇を聴いたような気分になれるのだから、その構成はやはり相当に巧みなものである。

 演奏だが、1987年の収録だけあって、かつてマゼールにあって覇気やおどろおどろしさはほとんどなく、全体は円満そのもの。逆にいえばオペラチックなところがそれほどある訳でもなく、全体はコンサート・ライクなものといえる。ただし、オーケストラはベルリン・フィルだから、その精度や安定感たるや絶大で、この巨大な楽劇の片鱗を実に安心して楽しむことができる。
 ついでに録音はテラークで、全体としてはいつもと同様ホールトーン豊かな、例のふっくらした音質なのだが(それにしてもテラークで捉えたベルリンの音というのも珍しいと思う)、雷神ドンナーの一撃な凄まじい迫力を捉えられていて、テラークらしい見せ場もしっかり用意されている。
 この種のものとしては、ヘンリ・デ・フリーハー編による「指環~オーケストラル・アドベンチャー」というの作品もN響で視聴したことがあったが(最後にブリュンヒルデの自己犠牲をくつけた独自の版に仕上げ直していた)、編曲、演奏、録音ともに圧倒的にこちら方が優れているという印象だ。

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