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シューベルト 即興曲 作品90 D.899/Mvd.ヘーク

2010年05月08日 10時57分45秒 | クラシック(一般)
 ブリリアントから出たシューベルトのピアノ曲を集めたボックスセットからのもので、昨夜からちょこちょこ聴いているところ。大分前にも書いたが、この曲の演奏といえば、もうかれこれ30年くらいイングリッド・ヘブラーのものしか聴いてないような状態で、この半世紀のどんな演奏があったのか、その変遷などまったくおろ抜いて、いきなりこのマーティーン・ファン・デン・ヘークによる「最近の演奏」を聴くと、そのおそろしく異なる趣きに愕然としてしてしまう。

 第1曲はいかにもシューベルトの短調という感じの音楽で、ひっそりとした哀感がじわじわと広がっていくあたりが印象的な曲で、途中転調して長調になる部分の壮麗な美しさもひときわ心に残る作品でもあるのだが、前述の通りヘブラーの木訥とした演奏を長らく聴いて来た耳には、このへークのクリアでシャープな音色、快調なテンポですいすい進む演奏は(ヘブラーより30秒ほど演奏時間が短い)、極めてジャストなノリと正確無比さとあいまって、これが今時の演奏なのかと驚いてしまう。

 第2曲はロココ風な軽快さがある音楽で、三連符のアルペジオが印象的。こういう曲だと現代のピアニストであるへークは(この人はナクソスのアルバムなどでもたまに名前をみるが、名前からしてオランダ人だろう)、まさに玉を転がすような粒が揃って美しく、またカラフルな音色でもってこの曲を弾いていて、その感覚的な美しさはなかなかのものがあると思う。個人的にはヘブラーのちょっとくすんだ、手縫いの衣服みたいな風情の演奏が懐かしくもあるが。

 美しいさざ波のようなアルペジオに乗ってロマンティックな旋律が歌われる第3曲は、ちょっとショパンを思わせるような陶酔感があり、個人的にはこの4曲の中ではもっとも好きな曲だ。へークの演奏はずいぶんテンポが早いな…と思っていたら、意外にもヘブラーより10秒以上時間をかけて演奏していた。きっと、インテンポですっきりスポーティーすっきりと弾いているので「早い」と感じるのだろう。その分、この曲の濃厚なロマン性のようなものは薄らいでいるようにも思うが。

 最後の第4曲は、第2曲ような細かい動きがキラキラとする部分に始まり、中間部ではちょっと深刻な気分となって、第1曲の雰囲気を思い出させたり、再び気を取り直すように明るい気分の音楽に転じてみたりと、まさに即興曲という名に相応しい自由に飛び交うような展開をする。へークは粒ぞろいなタッチの美しささすがだが、この曲の「気まぐれ感」のような表現はさすがにヘブラーの人間くさい演奏に、今一歩劣ってしまう印象だ。


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