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大貫妙子/Cliche

2007年10月12日 23時36分11秒 | JAPANESE POP
大貫妙子って、なんかイメージ的に「永遠に30代」みたいなところがあるけれど、私より5歳年長ってことは....今年でもう53歳になるんですね。このアルバムは彼女が29歳の時、つまり82年のものですが、多くの人に大貫妙子というミュージシャンのイメージを焼き付けた作品になるんじゃないでしょうか。彼女は70年代中盤にニュー・フォーク的なところから出発しましたが、フォーク的に深化する訳でも、ニュー・ミュージックやAORに染まる訳でもなく、妙に座りの悪い作品を連打していましたが、これはおそらく自分のもっているミュージシャン・エゴのようなものを本人もよく掴みきれていなかったんでしょう。ところが、本作に先立つ「ロマンティーク」「アヴァンチュール」といった作品あたりから、徐々にその音楽にヨーロッパ的なセンスを取り入れ始め、彼女独特の堅く閉ざされたような情感とひんやりとした透明な歌声とを生かす音楽スタイルを見つけるはじめる訳ですが、そのピークとなるがこの作品という訳です。

 アルバムは前半4曲が坂本龍一、後半6曲はシャン・ミュージーのアレンジですが、1曲目の「黒のノアール」はこのアルバムのテーマ曲といえる作品で、情緒面々たるメロディーを冷たいほどに澄んだ声で、まるで自分の情感ですら突き放すような歌う彼女のヴォーカルを聴いたときは、「いやぁ、こりゃ自分の一番弱いところを突いてきた音楽だな」などと意味不明なことをつぶやいたものです。2~4曲はある意味で当時のYMOの守備範囲ある、ユーロピアン・ミュージックとテクノの融合といえますが、「色彩都市」の上品さセンスは、まずは大貫と坂本の理想的コラボレーションのひとつといえると思います。5曲目からは本場のフランス・サウンドへのスウィッチ、どれもフランスの香り一杯のサウンドに彼女の声がこよなく調和していますが、個人的には7曲目「つむじかぜ」の明るいシャンソン風なところが好き。ついでに書くとこの曲以降の暗い情念に満ちたちと深刻展開はなはなかなか凄いものがあって、それを浄化するように映画ばりのロマンティックさに模様替えしたインスト版「黒のノアール」で締めくくるという構成は、渋谷陽一さん風にいうと、ゲシュタルト崩壊しそうなドラマチックさがあります。

 ちなみに彼女はこのアルバムでヨーロッパ路線を確立した訳ですが、この後84年の「カイエ」という企画っぽいアルバムでこの雰囲気を一度だけ再現しましたものの、実をいうとそれ以外、こうした路線はどんどん後退させてしまい、音楽的には少々ストイックで無色透明になり過ぎていったように思います。このアルバムで彼女のファンになったような私からすると、これはちと残念だったりするんですが、21世紀にはいってからの彼女の作品って、私聴いたことないんですが、そろそろこのあたりに回帰したり....してないか。

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