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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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フード・ブレイン/晩餐

2010年05月29日 16時04分30秒 | JAPANESE POP
 柳田ヒロ(Kye)、陳信輝(Gtr)、加部正義(Bs)、つのだひろ(Ds)という、当時(1970年)、日本に居たロックの精鋭によって作られたオール・インストのジャム・セッション。私は当時のロックについては疎い方だが、当時の日本の業界は、グループサウンズにしてから全く歌謡界の論理で運営されてたに違いなく、1970年にロックのレコードが出されていた事自体はありだとしても、よもやこうした非商業的でアングラの匂いがプンプンする日本版「スーパー・セッション」ばりのアルバムまで作られていたとは実に意外だった。

 さっそく聴いてみる。1曲目はブギウギのリズムにのって、ハードにドライブする作品。ハードロックとサイケが妙に混濁したような音楽で、大蛇がのたうちわるような加部正義のベースもかなりヘビーなプレイであり、このカオスっぷりはなかなかである。3曲目の「M.P.Dのワルツ」は、それこそ「スーパー・セッション」の生みの親、当時は今では想像もつかないほど影響力があったアル・クーパーのオルガンを思い起こさせる柳田ヒロのスペイシーなオルガンがフィーチャーされている。一方、4曲目の「レバー・ジュース販売機」は加部のベースと陳信輝のギターがフィーチャーされ、クリームとかヴァニラ・ファッジを鋭角的にして、ギラギラさせたようなサウンドになっている。

 5曲目の「目覚まし時計」では、再び柳田のオルガンがフィーチャーされる。70年当時の最新モードからするやや旧式なプレイだが(キース・エマーソンのプレイの影響はまだないに思える、当然シンセはまだ使っていない)、かなり熱いプレイである。6曲目の「穴のあいたソーセージ」では、オーネット・コールマン、ついでにマルイスの「ビッチズ・ブリュー」的な、いかにもロック・ミュージシャンによるフリージャズになっている(そういう意味でクリムゾンなんかに近い感触がある)。それにしても、この混沌とした様相は、初めて聴くアルバムであるにもかかわらず、なんだか小学校5,6年の頃にタイムスリップしたような懐かしさがある。

 当時、この手の換骨奪胎ロックって、実は日本のスタジオや映画、テレビなどで似たような音はけっこう耳にしていたと思う。しかし、それをこうした形で残しておいたのは、今となってはレアとしかいいようがない。それにしてもこのブギウギに始まり様々な当時のロックをフォローしつつ、ラテンやバッハなどもつまみ食いする音楽的情報量の多さはいかにもニッポンである。スタイルの進化をスピード競争していた時期に聴いたら、まるでフォロワーにしか聴こえなかったであろう音楽だが、今となって独自のニッポン的価値感を主張できるかと思う。

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2 コメント

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Unknown (はかせ)
2010-05-30 08:21:55
フードブレインって、長いこと聴いていたけど自分では上記のようなしっかりしたレヴューはサッパリ書けませんで、読んでとても納得です。

オレは加部正義のベースが好きで、Pink Cloud
から派生し、いろいろ探し始めたころ、このレコードの存在を知りましたが、いかんせんアナログは腰が抜けるほど高かったです。

マニアな友人連中でも持ってる人はただの一人もおらず、90年にCDになったときは、もう発売日が楽しみで楽しみで。

でも、それから見てももう20年も経ってしまいましたねえ、たぶん4回程CD化されたし。
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Unknown (BlogOut)
2010-05-30 13:14:41
> いかんせんアナログは腰が抜けるほど高かったです

 ですよね。個人的には「日本で70年代初頭に行われたスーパーセッションのアルバムがある」みたいに、音楽の先輩に吹聴されたのが80年代始めくらいだったですかね。先日13oo円になっているのを知って思い立って購入してみました。

 1970年に遙か極東で、こうした目一杯トンがって、ギラギラしたセッションが記録されていたのは幸いでした。ちょうどナクソスの日本作曲家選輯シリーズで聴ける戦前の日本の作曲家たちの作品が、今聴くと非常に素晴らしいのと似てる感じがします。

 あのリアルタイムで聴いたら、「こんなん物真似だろ」と一蹴されていたかもしれないですが、音楽モードがなんでもありになった現在だからこそ、本当の価値が見えてくるところもあると思います。
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