Blogout

音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

高木彬光/人形はなぜ殺される

2007年02月14日 23時51分41秒 | Books
 「呪縛の家」に続き、通勤途中で読もうとバックの中に放り込んでおいてものの、なんやかやで中々読み進めることができなかったのですが、先ほど出張帰りの電車の中でようやっと読了しました。「人形は何故殺される」といえば、神津恭助シリーズの中でも筆頭にあげる人もいるくらいの名作で、今回、読んでみても高木作品でも最大級のトリックと、それに密接に連動した「人形は何故殺される」というタイトルの魅力、奇術というおあつらえ向きに舞台装置などなど、魅力的な趣向にはことかかない傑作には違いないと思うのですが、どうもストーリーに引き込まれないんですよね。記憶によれば、高校時代にこれを初めて読んだ時も同様でしたから、どうも私にとってこの作品は鬼門のようです。魅力を認めるのはやぶさかではないけれど、少なくとも「刺青」や「能面」のように、すくなとも数時間で読み切ってしまうような魅力はないよといったとこでしょうか。

 何故なのだろうといろいろ考えてみるに、まず名探偵神津恭助が序盤から事件に関わっているのも関わらず、結末近くまで一向に犯人の見当がつかず(関係者は何人が真相に気が付くのに....です)、混迷したムードしまま後半まで事件が続いていくストーリーが、どうも釈然としないというのはあるかもしれません。それから、奇術や魔術といった要素が全面に出て、登場人物もそれなりに戯画化する必要があったのか、怨恨や情念だといった要素が気迫で、なにやら切迫感に欠けた感じがしてしまったというのも大きかったんでしょう。いずれにしても、今一歩ストーリーに没入できない憾みがあったということです。
 ちなみにこの作品は昭和32年作ということで、語り口も初期のようなおどろおどろしいものから、大分柔軟で洗練されたものになってきていますし、舞台そのものが戦後の動乱期とは大分違った世相になっていて、初期の作品に比べるとだいぶ年月の流れを感じさせます。また、ストーリーに経済犯罪が見え隠れするのも、その後高木作品の変遷を考えると興味深い点といえるかもしれませんね。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 江美(チャン・メイ・チイ)/... | トップ | マーラー 交響曲第5番/イン... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Books」カテゴリの最新記事