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入江曜子/溥儀 ~清朝最後の皇帝~

2009年11月18日 22時34分33秒 | Books
 先日、12月25日に「ラストエンペラー」はNHKのBShiで放映される。この作品は公開時に劇場でみたし、今回オンエアされるらしいディレクターズ・カット版もビデオで観ているのだが、イタリア最後の巨匠ベルトリッチが作り上げた畢竟の大作を20年振りくらいにじっくりと観てみようと目論んでいるのだが(まぁ、DVD購入するか、レンタルしてきてもいいんだけどね-笑)、その前に本編の復習(予習?)もかねて、こんな本を購入してみた。一昨日、一通りざっと最後まで読んで、現在再読中ところだが、歴史に翻弄され数奇な運命を辿った愛新覚羅溥儀の生涯を、新書というコンパクトであれ正面からまとめた伝記である(岩波新書)。

 私は溥儀に関する著作はほとんど読んだことがないので、他と著作と比べどうこういう立場にないが、本書は最初にふたりの溥儀が写ったトリック撮影の写真から話しが始まるところからも明らかなとおり、「彼の生涯は、清朝最後の皇帝として、祖業を復活する『復辟』を担わされた一人と、その宿命から逃れて此処ではないどこかへ、自分ではない誰かになりたいというもう一人が見え隠れする(略)おそらく少年の日に、二つの人格をそのまま内に抱えこんでしまうことで楽に生きることを知った永遠の少年である溥儀の溥儀たるゆえん(後書きから引用)」という視点でもって彼が生涯に語っている。彼が行った数々の不可解な行動は、自分の置かれた状況を敏感に察知し、周囲が期待していることに応えてしまうという行動パターン故らしいが、その根源にこういう本質があるという訳だろう。なかなかおもしろい。

 本書が膨大な資料を元に書かれていることは歴然としておりに、特に溥儀をとりまくの女性については、興味深いエピソードなども沢山書かれているのだが、時に木を見て森を見ずみたいになってしまいがちなのは多少気になった(これはこれで著者の個性というべきなのかもしれないが)。ただ、まぁ、200ページ余りで清朝末期から満州、そして終戦後はシベリアから帰国して文革までの激動の歴史を語るには、やはり全体に駆け足になってしまうのはいたしかたないところかもしれない。特に前半の清朝の末期、あるいは中盤の満州での、入り乱れる人間関係や社会情勢を語るには、この倍くらいの分量があっても良かったかなと思う。

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