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中川淳一郎/ウェブはバカと暇人のもの

2009年06月10日 09時37分12秒 | Books
 非常に痛快でかつ読後にはなんだかけっこうな無力感に襲われる本だ。ネットにはWeb2.0に代表される、新しい技術に対するほとんど楽観的ともいえる、「これが人類の未来を築く」的な礼賛がある一方、あまたの犯罪を筆頭に、渦巻く誹謗中傷、そこまでいかずともやけにドロドロに人間関係だのに「ネットっていつからこんなしょーもないカオスになっちゃったのよ」みたいな現状も厳然とある。

 私のようなネットのあれこれで飯食う人間にとって、この両者がなんか渾然一体となった今のネットという訳のわからない世界は、妙に居心地の良さそうでいて悪く、常に釈然としないものを感じ続けている訳だけど、この本ではそのあたりを「集合知だの、ロングテールだのいってるのは頭の良い人だけで、ネットユーザーの大半はバカと暇人」と過激に定義している。最初は「おいおいこんなこといっちゃったら炎上しちゃうぜ」とか思いながら読んでいたのだけれど、なにしろ出てくる話などを読むにつけ、「ウェブはバカと暇人のもの」がいちいち納得できる事例ばかりなのだ。

 いちいち例はひかないけれど、この本に出てくるネットに生息するオバカな例の数々は本当に身につまされるものばかりである。実際にこういう現場にいるといたいほど良くわかる。ネットというのはお互い顔が見えず、匿名性もけっこう高いため、普通なら我慢するようなことも思わず発散してしまう人が多いからだろうけれど、まったく自らの価値観が全世界に通用するものとスタンダードと思いこみ、ネット内で「我こそ正義」とばかりに、攻撃的意見だの糾弾だのをまくしたてる「仮称:正論クン」とかは、その最たるものである(かくいう、私などさしずめ「暇でおバカな仮称:知ったかクン」だろうな)。

 結局、ネットというのはそういう人達の集まりであり、ある種の理想主義だの、思いやりだの、知性至上主義だのを前提にして、ネットで地図を描いてみたところで、絵に描いた餅になってしまうというところだろう。本書はそうした意味で筆者がネットで物の見事に敗北した記録にもなっている。本書の最後にある敗北宣言とはそういう意味であり、私が暗澹たる気持ちになったのもまさにその点であった。なので、この本、おもしろいけど、最後には妙に気分が滅入るのである

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