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春日武彦&平山夢明/「狂い」の構造

2009年06月18日 23時49分06秒 | Books
 精神科医、春日武彦と小説家、平山夢明との対談集、私は寡聞にして両氏に関してはまったく知らないのだが、それぞれのそういう分野でのエキスパートではあるらしい。このご両人がアカデミックという言葉とはほとんど無縁な、いっしまえば非常に下世話な雰囲気かつ乾いたユーモアが横溢する口調でもって「人が狂うこと」あるいはその前段階になるであろう諸相について、あれこれ蘊蓄を傾けるという趣向だ。

 この本のおもしろいところは、おそらく読んだ方が誰でも指摘するであろう。日々の生活に潜む「面倒くさい」が、もろもろの「狂い」への揺籃器となっていることを指摘している点だと思う。企業の不祥事だとか、端からみていて「どう考えても変な事件、おかしい出来事」など、そもそも「面倒くさい」がトリガーになって引き起こされるのではないか、といっている訳だ。
 確かにそうだろうと思う、自分も振り返ってみると、たいてい自分の部屋が荒れ果てているような状況というのは、なにもかも全てが面倒くさくなって、おおよそ知的だとか生産的というようなものとは逆の、ただただ怠惰な日常生活に埋没していることが多い。こういうところから人は狂い始めるのだといわれれば、確かにそういう気がしてくる。

 あと、おもしろかったのは「バルンガ病」という言葉。バルンガというのはウルトラQに出てくる、なんでも吸い込んで際限なく肥大していく雲のお化けみたいなモンスターだけれど、あれになぞられえて、己のプライドが異様にふくれあがってしまっている人たちの症状をいっているらしいのだが、そもそもこのネーミングがヤケに笑えることに加えて、「いるいる、こういう身勝手な理論で、けっこう世の中泳いじゃってる人って~」と妙に納得してしまうのだ。
 本にも出てくるのだが、金はないわけでもないのに、「義務教育なんだから給食は払わなくていいハズですぅ」とか「そもそも義務教育って、無料であるべきじゃないのぉ」とか、まぁ、主張するのは勝手なんだけど、その理屈でもって本当に払わないことを実践しちゃってるバカ親とか、ああいう人たちのプライドというか、いわゆる王様理論などその典型だと思う。

 そもそういう日常生活に潜む「おかしい人、変な人」から、「狂い」というものを引き出してくる切り口はおかしい....じゃなく、とてもおもしろい。ついでに書けば、そういう日常に潜む精神の裂け目のようなものに、自分も日常的に隣り合わせになっていることをふと感じさせ、思わずひやりさせられるあたりにけっこうな「深さ」も感じさせる。おふざけみたいな会話もあるが、その情報量、深度はなかなかのものがある。

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