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透明人間(小田基義 監督作品)

2010年04月23日 22時59分17秒 | MOVIE
 東宝が昭和29年に作った作品である(ということは「ゴジラ」の同年の制作ということになる)。前にも書いたが、東宝のいわゆる「変身人間シリーズ」は、「美女と液体人間」「電送人間」「ガス人間第一号」「マタンゴ」の4本というのが一般的な見方だと思うが、この「透明人間」を加えて5本と考えるムキもある。何故これだけが別格気味なのかというと、やはり円谷英二が特撮を担当しているとはいえ、特撮映画としては今一歩地味な感がしてしまうこと。そして、演出が戦前からホームドラマを得意としてきた小田元義ということもあり、どうもその後の変身人間シリーズと比べると、シリーズに共通する虚無的でハードボイルドなタッチが希薄な感じがしてしまう点などが大きいのだと思う。
 また、戦争中の人体実験まがいの軍事施策の被害者として「変身してしまった人間」の悲劇をテーマを設定しているのはシリーズ共通のものだが(「電送人間」や「ガス人間」を思わせる)、この作品では「透明化してしまった人間」はあくまでも被害者であり、本当の悪は目に見えるギャング団という筋書きというのも異質な感がある。透明人間の河津清三郎は、ヒロインの三条美紀と恋に落ちるし、盲目の少女に対して心優しい善意を全開して、最後には本当の悪であるギャング団を倒そうとして死んでしまう、いわば悲劇のヒーローなのである。後年の倒すべき悪の主体として、派手な特撮を使って変身人間を映画に登場させるには、特撮の認知度、ストーリーそのものの新奇さ、などからして、昭和29年という時代にはいささか早すぎた物語だったのかもしれない。

 出演陣は、あと河津清三郎が顔を見せない透明人間を好演、脇役陣は土屋嘉男(5年後だったら、この役は彼がやっていたことだろう)、藤原鎌足、高田稔、村上冬樹、恩田清二郎という渋どころが集結しているが、「ゴジラ」とほとんど配役がかぶらないのは、やはり制作が同時期だったからだろうか。ちなみに冒頭、車にひかれる男は中島春男である。ヒロインは三条美紀で妖艶な歌手役だが(「液体人間」の白川由美と似たような感じ)、この時期の彼女はホントきれいで、「静かな決闘」の清楚な役もそそられたが、本作の健気なキャラクターも良かった。ついでにお約束のキャバレー・シーン、昭和20年代後半でまた復興途中で、当時はまだまだ戦前の趣きを残していた東京の風景がたっぷり見れるのも楽しいところだ。
 また、特撮シーンとしての見せ場は、透明人間の顔からペイントを落とし、次第に透明化していくあたりが印象に残るが、前述のとおり全体にスパイスもしくは小技といった感じで、それほど全面に出てきている訳ではなく、けっこう地味なものである(むしろラストの工場の炎上シーンの方がそれ「らしい」感じがする)。透明人間がスクーターにのって追跡するシーンとか透明のまま物を投げつけたりするシーンなどは、当時は刺激的なシーンだったのかもしれないが、使い古されたパターンなので、やはり時代を感じさせてしまうのは致し方ないところか。

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