昭和42年公開、ポツダム宣言を受けた敗戦色濃厚な日本が、それを受諾するまでの極限状態の昭和20年の8月15日を、通称「宮城事件」とよばれる出来事を軸に描いた作品である。当時の東宝が擁した錚々たる面々が総出演して、岡本喜八が演出した超大作でもあった。もうこの十数年、この作品はいったい何度観たか知れないのだが、本日は終戦記念日ということもあり、久しぶりに観てみることにした。
ポツダム宣言受諾の方針が決まるまでの長い序盤は、異様な緊張感に満ちている。天皇陛下を演じる松本幸四郎ははっきりとは出てこないが、得も言われぬ存在感があり、三船が演じる陸軍大臣と山村聡が演じるところの海軍大臣との確執を中心にはりつめた雰囲気で進んでいき、忘れた頃にタイトルが現れる実にドラマチックなものとなっている。本作の希有なところは、人物の比重はあれこれと変わっていくが、結局終戦を迎える最後まで続くところだ。
豪華な出演陣も地味にドラマにぴたりとはまって、素晴らしい群像劇をなしている。中盤では、三船敏朗と笠智衆のやりとりがやはりぐっとくる。「阿南君は…いとまごいににきてくたんだね」という、有名なシーンなど何度観ても素晴らしい感銘を受ける。このあたりから物語は反乱軍が主眼になっていくから、ここはまさに中盤の…いや、映画中最大のハイライトといってもいい出色のシーンになっている。
また、後半中心となる黒沢年男、佐藤允、中丸忠雄、久保明、中谷一郎らが演じる、ギラギラとした青年将校達の狂気の如き行動も実に見応えがあるし、更には宮口精二が演じた東郷外相、志村喬の情報局長、加藤武の迫水といった地味な配役陣もここでは珠玉の演技を披露している。ともあれ、こうした多彩な登場人物の動きを、大きな「歴史のうねり」として演出した岡本の手腕はまさに完璧だ。
本作の公開時は、終戦から数えて22年目、当時を知る関係者はまだまだ存命していたし、当時の記憶だって生乾きともいえる状態だったであろう。そのドキュメンタリー的ともいえるドラマの生々しさはちょっと類がない。まさにあの時に作っておいたからこそ、獲得しえた生々しさともいえる。この作品からも既に40年以上経った現在、仮に似たような映画を現代に作ろうとしても、もはや絶対不可能だと思う。
そんな訳で、本作はその映画的に非の打ち所のない素晴らしさと共に、いわゆる歴史的な資料としても、今後ますます歴史的価値が上がっていくに違いない。今回はDVDで観たが、早いところマスターフィルムのレストア作業を敢行して、クリアな画像と音声でぜひとも後世に残る歴史的遺産として残してもらいたいものだとつくづく思った。
ポツダム宣言受諾の方針が決まるまでの長い序盤は、異様な緊張感に満ちている。天皇陛下を演じる松本幸四郎ははっきりとは出てこないが、得も言われぬ存在感があり、三船が演じる陸軍大臣と山村聡が演じるところの海軍大臣との確執を中心にはりつめた雰囲気で進んでいき、忘れた頃にタイトルが現れる実にドラマチックなものとなっている。本作の希有なところは、人物の比重はあれこれと変わっていくが、結局終戦を迎える最後まで続くところだ。
豪華な出演陣も地味にドラマにぴたりとはまって、素晴らしい群像劇をなしている。中盤では、三船敏朗と笠智衆のやりとりがやはりぐっとくる。「阿南君は…いとまごいににきてくたんだね」という、有名なシーンなど何度観ても素晴らしい感銘を受ける。このあたりから物語は反乱軍が主眼になっていくから、ここはまさに中盤の…いや、映画中最大のハイライトといってもいい出色のシーンになっている。
また、後半中心となる黒沢年男、佐藤允、中丸忠雄、久保明、中谷一郎らが演じる、ギラギラとした青年将校達の狂気の如き行動も実に見応えがあるし、更には宮口精二が演じた東郷外相、志村喬の情報局長、加藤武の迫水といった地味な配役陣もここでは珠玉の演技を披露している。ともあれ、こうした多彩な登場人物の動きを、大きな「歴史のうねり」として演出した岡本の手腕はまさに完璧だ。
本作の公開時は、終戦から数えて22年目、当時を知る関係者はまだまだ存命していたし、当時の記憶だって生乾きともいえる状態だったであろう。そのドキュメンタリー的ともいえるドラマの生々しさはちょっと類がない。まさにあの時に作っておいたからこそ、獲得しえた生々しさともいえる。この作品からも既に40年以上経った現在、仮に似たような映画を現代に作ろうとしても、もはや絶対不可能だと思う。
そんな訳で、本作はその映画的に非の打ち所のない素晴らしさと共に、いわゆる歴史的な資料としても、今後ますます歴史的価値が上がっていくに違いない。今回はDVDで観たが、早いところマスターフィルムのレストア作業を敢行して、クリアな画像と音声でぜひとも後世に残る歴史的遺産として残してもらいたいものだとつくづく思った。
映画も一度見なくては!
大宅壮一は序文書いているだけのようですね。
映画の方はこの原作を細部までほぼ忠実にドラマ化しています。
もっとも現代では、原作に描かれた人物像やエピソードなども
あれやこれやと再検証されているようですが、
とりあえずあれを史実とするなら、
この映画の臨場感は凄いものがありますね。
ぜひ来年のお盆にでも観てください。