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蘇州夜曲(支那の夜)

2010年08月22日 15時42分49秒 | MOVIE
 私の世代だと、李香蘭といえば、「3時のあなた」の司会者、そしてその後国会議員になった元女優の山口淑子のことである。この人が元々李香蘭という名で戦前はたいそう人気のあった-しかも数奇な運命を辿った-女優だったというのは、知識としては知っていても、その実体はまったく伺いしることができなかった。おそらく、彼女の出演作が日中合作の国策的な色彩が濃厚だったため、戦後になると半ば封印状態となったことも大きかったのだろう。先日、幸いにも日本映画専門チャンネルで彼女の作品が何本かまとめてオンエアされたので、さっそく観てみることにした。

 本作は昭和15年制作、歌も映画もたいそう有名な作品だ。当時は中国人だと思われていた李香蘭、そして日本の大スター長谷川一夫の共演ということで当時大ヒットした作品でもある。私のお袋の世代など、きっとこれを夢中で観たクチなのだろう。抗日的な中国女性が日本男性の誠実さ真面目さにうたれて、彼を慕うようになるというストーリーで、その国策的な意図は明確だが、今となっては、もう古式ゆかしい恋愛ドラマとして観ることが出来ることもできると思う(などといったら、現代の日本人の傲慢ということになるだろうか)。ラストなどまさにあの当時ならではといえる破格の映画的展開によって怒濤の結末を迎え、その様はまるでハリウッド映画のようだ。

 当時の山口淑子は20歳、猫のような野性味とキュートさブレンドして、当時の日本人が中国人に抱いていたであろう、良い意味でのエキゾチックさ、ミステリアスさに魅了されるも、さもありなんと納得できる美貌である(もっともそれは東洋人というより、どちらかといえば彫りの深い白人的なイメージでもあるが…)。共演の長谷川一夫は、私の世代だと圧倒的に時代劇の人というイメージだが、ここでは、誠実で紳士的な船乗り役という役回りで、まさに大昔の美男美女揃い踏みという感じである。共演陣には若き日の藤原釜足、「おえんさん」の清川玉枝、そして当時の人気歌手、服部富子などが登場する。

 あと、見逃せないところといえば、当時の上海租界の風景が見ることができるところだろう。当時、大都会だった上海の国際都市ぶりがよく伝わってきて、「戦前にしか存在しなかったある場所のある時」が、見事に切り取られた貴重な映像を堪能できる。ちなみに主題歌?として劇中に李香蘭は自身が歌う「支那の夜」も実にエキゾチックなメロディアスさが素敵な曲だ。この曲は当時大ヒットしたらしいが、レコードの方は渡辺はま子が歌ったヴァージョンで、李香蘭自身は結局レコードを残していないようだ。海外では「リリー・マルレーン」の日本版のようなイメージでたいそう有名らしいから、彼女自身沢山唄っているとは思うのだが。

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