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日本の悪霊 (黒木和雄監督作品)

2010年08月31日 23時22分58秒 | MOVIE
 日本映画専門チャンネルでシリーズとして放映している「ATGアーカイブ」を、6月くらいからぼちぼち観ているところだ。ATGという映画会社が生み出した初期の作品は、おそらく「遅くやってきた日本のヌーヴェル・ヴァーグ」ってところだろう。よくわからないが、本作などその典型ではないだろうか。
 70年の制作であるにもかかわらずモノクロ、表向きヤクザ映画の体裁をとりつつも、その手の映画とは全く異質なドキュメンタリー・タッチ、劇中にはフォーク、反権力闘争、伝統の否定、高度成長期終焉時の日本の風俗、無軌道なエロとこの時代のイコンがずらり揃っていてる。

 とある大阪の街にやってきたヤクザの助っ人とそれを取り締まる刑事の風貌が瓜二つだったことから、このふたりが入れ替わり、次第に両者の境界が曖昧になっていき…というのが基本的なストーリーだが、やがて50年代の左翼運動のなれの果てというか、思想闘争の暗部とそこに絡まめとられた人間の「罪と罰」的な葛藤があぶりだされるあたりが、いかにもATG的な雰囲気だ。
 黒木和雄の演出は、ドキュメンタリー的な乾いたタッチで、1970年という時代の風俗を乾いたエロとフォーク・ソングを中心に描き(岡林信康本人が出てくるし、音楽は彼と早川義夫が担当している)、異化作用満載のトリッキーな演出が極めて奇妙な雰囲気を盛り上げていて印象的だ。二役を演じる佐藤慶のニヒルなムードが、そのシュールな役柄をぴたりとはまって妙な凄みすら感じさせる演技になっている。

 という訳で、ATGらしく無駄に観念的なところはあるとしても、全体としてはかなりおもしろく観ることが出来た。それにしても、ここに出てくる1970年の地方都市ってのは、意外にも大阪万博の近代的イメージとは、かなり違う「大昔のニッポン」だったには驚く。自分は当時、小学3,4年だったはずだが、やはり地方の街と呼ぶべきところに住んでいた訳だけれど、「こんなに古色蒼然とした街だったけ…?」っと思ってしまった。万博とかああいうイメージが強すぎて、きっと記憶がごっちゃになってしまっているのだろう。

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