ウィントン・マルサリスが85年に発表した第3作。本作ではウイントン・マルサリス、 ケニー・カークランド、ブランフォード・マルサリス、ジェフ・ワッツに加え、ベースがレイ・ドラモンドからチャーネット・モフェットに替わり、一曲のみロン・カーターが参加する形で収録されている。ちなみに本作は、2管を擁した第一期マルサリス・バンドの最終作でもあり、収録された7曲はいずれも新主流派~新伝承派の完成型として、素晴らしい充実した演奏を展開しており、ラストに相応しい完成度を感じさせる作品ともなっている。ちなみに、ケニー・カークランドとブランフォード・マルサリスは、このバンドの後、スティングのバンドに加入するが、これなど、1985年というミュージシャンがジャンルを越境する現象が常態化してきた時期を象徴する出来事だったと思う。
さて、本作が先に書いたとおり、どの曲も非常に充実しており、アルバム全体の完成度が極めて高い。前作の「シンク・オブ・ワン」もなかなかの仕上がりだったが、ジャズ的感興、あるいは聴き応えという点で、ジャズこちらの方が一段上を行くと思う。1曲目の「Black Codes」はかなりエキセントリックな非ジャズ的なテーマで始まるあたりはいかにもウィントン・マルサリスという感じなのだが、前作まであったような「とってつけたような」ところがなく、曲のダイナミズムを拡大していくために、有機的に曲に配置されているのがいい。4ビートへとリズムチェンジするプロセスも実に自然だ。要するにこなれてきているのである。2曲目の「For Wee Folks」は新主流派的な色合いを感じさせるミディアム・テンポの作品だが、適度に思索的でムードの中、多彩なインプロヴィゼーションが展開されていく。その完成度はなかなかだが、ジャズ的なリラクゼーションを忘れていないのもいい。ラクに聴ける....そういう点もジャズには大切だ。「Delfeayo's Dilemma」はよくスウィングしたダイナミックでスポーティーな4ビート作品で、妙にこねくり回さずストレートに演奏しているところがいい。こういう曲ではバンドメンが非常に優秀なのが如実に表れているとも思う。たぶん、アルバム中のハイライトとなる一曲だ。
4曲目の「Phryzzinian Man」は「For Wee Folks」と同様、新主流派的な色合いを持った作品。5曲目の「Aural Oasis」はバラード的作品で、アーシーでけだるい感じが印象的だが、こういう曲だからこそロン・カーターが呼ばれたのだろう。確かに彼のベースの重量感や粘りはこの曲にある都会的倦怠感のようなものに、いまひとつリアリティをあたえていると思う。6曲目の「Chambers Of Tain」は「Delfeayo's Dilemma」と並んで、このアルバムのハイライトだろう。演奏は黄金時代のマイルス・クインテットがデジタル録音で甦ったような趣だが、ソロの合間に背後にイントロのモチーフを循環させるアレンジは、フュージョン以降のモダンさであるし、ブランフォードのソロが4ビートに転じた後の、スリリングな展開は素晴らしいの一語につきる。ラストの「Blues」は、このアルバム唯一のルーツ系の音楽で、トランペットとベースのデュオで演奏されている。こういう音楽は苦手だが、いささか長目のアルバム、クロージング・ナンバーとして聴くなら悪くない。
さて、本作が先に書いたとおり、どの曲も非常に充実しており、アルバム全体の完成度が極めて高い。前作の「シンク・オブ・ワン」もなかなかの仕上がりだったが、ジャズ的感興、あるいは聴き応えという点で、ジャズこちらの方が一段上を行くと思う。1曲目の「Black Codes」はかなりエキセントリックな非ジャズ的なテーマで始まるあたりはいかにもウィントン・マルサリスという感じなのだが、前作まであったような「とってつけたような」ところがなく、曲のダイナミズムを拡大していくために、有機的に曲に配置されているのがいい。4ビートへとリズムチェンジするプロセスも実に自然だ。要するにこなれてきているのである。2曲目の「For Wee Folks」は新主流派的な色合いを感じさせるミディアム・テンポの作品だが、適度に思索的でムードの中、多彩なインプロヴィゼーションが展開されていく。その完成度はなかなかだが、ジャズ的なリラクゼーションを忘れていないのもいい。ラクに聴ける....そういう点もジャズには大切だ。「Delfeayo's Dilemma」はよくスウィングしたダイナミックでスポーティーな4ビート作品で、妙にこねくり回さずストレートに演奏しているところがいい。こういう曲ではバンドメンが非常に優秀なのが如実に表れているとも思う。たぶん、アルバム中のハイライトとなる一曲だ。
4曲目の「Phryzzinian Man」は「For Wee Folks」と同様、新主流派的な色合いを持った作品。5曲目の「Aural Oasis」はバラード的作品で、アーシーでけだるい感じが印象的だが、こういう曲だからこそロン・カーターが呼ばれたのだろう。確かに彼のベースの重量感や粘りはこの曲にある都会的倦怠感のようなものに、いまひとつリアリティをあたえていると思う。6曲目の「Chambers Of Tain」は「Delfeayo's Dilemma」と並んで、このアルバムのハイライトだろう。演奏は黄金時代のマイルス・クインテットがデジタル録音で甦ったような趣だが、ソロの合間に背後にイントロのモチーフを循環させるアレンジは、フュージョン以降のモダンさであるし、ブランフォードのソロが4ビートに転じた後の、スリリングな展開は素晴らしいの一語につきる。ラストの「Blues」は、このアルバム唯一のルーツ系の音楽で、トランペットとベースのデュオで演奏されている。こういう音楽は苦手だが、いささか長目のアルバム、クロージング・ナンバーとして聴くなら悪くない。