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ブラームス ピアノ四重奏曲 第2番/プロアルテ・ピアノ四重奏団

2009年11月17日 00時14分28秒 | ブラームス
 さて、プロアルテ・ピアノ四重奏団による第2番だが、この演奏の特徴はなんといっても第1楽章の遅さだろう。これまで聴いたいくつかの演奏では第1楽章は一番早いバリリで14分15秒、あとのふたつは15分半くらいなのだが、この演奏ではなんと17分15秒もかけて演奏している。ひょっとするとリピートの問題なのかもしれないが、ぱっと聴きでもその「遅さ」は歴然だ。この楽章にある初期型ブラームスらしい若々しい推進力のようなものが、ある意味ぐっと後退して、その分、中期~後期型ブラームス的な侘びしさや落ち着きが表に出てきているという感じなのである。他では瑞々しさを全面に出した流れで演奏される第二主題が、とぎれがちの独白のような趣になっているあたりその最たるものだが、ありがちな弛緩した印象がなく、これはこれで説得力がある解釈に聴こえるのは、最後まで緊張感を保って演奏だからだろう。ともあれ、そのせいでこの演奏は「楽器の絡み合いの妙」といった点が実によく聴き取れる。

 もっとも第2楽章以降は、第1楽章ほどユニークな演奏ではなく、まぁ、まずは普通な演奏といってもいいと思うが、それでも随所に第1楽章と共通するこの楽団の独特な(といってもいいのだろう)、まったり感が出ていると思う。例えば第3と第4の早い楽章では、第1楽章同様、推進力やダイナミズム、あと構築性という点は少々抑え気味にして、全体に気の赴くまま....というか、「ブラームス流の渋い感情表現をよりラプソディックな趣で演奏してみました」という感じで、聴いていると、大作曲家ブラームス的威厳だとか風格といったものより、初冬の曇天の下、ドイツの田舎をとぼとぼ歩く髭のブラームスみたいな姿を彷彿とさせたりもするからおもしろい。
 一方、第2楽章は、第1楽章を一番早く演奏しているバリリが13分近くかけて実にデモーニッシュな演奏をしているに対し、プロアルテ・ピアノは11分程度で終わらせている。別段せかせかしている訳ではないけれど(むしろ逆)、ピアノとチェロが不穏な雰囲気を醸し出す部分など、あまり深刻にならず、全体に楚々とした風情の演奏に仕上げているのは興味深い。

 という訳で、プロアルテ・ピアノ四重奏団という団体は、どうも「早い楽章は遅く、遅い楽章は早く」演奏するという傾向があるみたいだ。もちろんこの演奏だけで即断するのも危険だが、あえて深読みすると、今風なマニエリスム的な解釈をしたのではないという気がする。もっとも、この楽団はブカレスト・フィルというローカルなオケのピック・メンバーによって構成されているらしいから、存外、その体質(オーケストラ的な響き、芸術性より職人的スタンス)が素直に出ただけなのかもしれない(たぶん、これが正解だな-笑)。ともあれ、他の演奏に比べると全体に「まったりとした演奏」であることは確かだ。
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