私が映画に耽溺して30年近くも前の80年代初頭頃、フェリーニやベルイマンなどと並んで芸術的評価の高かったイタリアの映画監督である。思い返すと、当時の日本でヨーロッパの映画監督といえば、ヌーヴェル・ヴァーグ系の監督の先鋭的な作品は一段落つき、ゴダール、トリュフォー、シャブロルといった新鋭たちは、そろそろベテランになろうかというある種の分岐点にさしかかっていた。また、フェリーニやベルイマンといった問答無用の巨匠レベルのまだまだ元気に活躍、ヴィスコンティは亡くなったばかりだったが、晩年に彼が手がけた作品はどれもほとんど最高の評価を得ていた。当時映画に熱狂していた私は、様々な映画の関する本を乱読したが、映画史的な本をひもとくとこれら巨匠たちと並び称され、いや、それ以上に高い評価を得ていたのが、ミケランジェロ・アントニオーニというイタリアの監督なのであった。
彼が60年代に監督した「情事」、「夜」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」、「欲望」、「砂丘」といった作品は、どれも公開時にほとんど最高の評価を得て、芸術性も高く、しかも客を呼べる監督(だったのだろう)として、一般ににも知られており、そうした知名度、評価が80年代初頭の頃はまだまだ残っていた。ところが、当時、まだレンタル・ビデオなどはまだなく、これらの映画のうち、「欲望」くらいしか私は観ることができなかった。ヴィスコンティやベルイマン、フェリーニなどはまだ新作に併せて旧作がリバイバルされることもあったが、ことに映画にに残る画期的な作品として有名で、かつモニカ・ビッティのアンニュイな美しさが映えたらしい「情事」や「夜」といった作品は、喉から手が出るほどに観たい作品だったが、そのような機会はついぞ訪れなかったのだ....と、なんだかいきなり、話が脱線しているが(笑)、このアルバムは全盛期のアントニオー二作品である「情事」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」のサントラから構成されたオムニバスである。
音楽は三作ともにジョバンニ・フスコ、全盛期のアントニオー二の作品のかなり部分を手がけている、いわばアントニオー二の音楽面での片腕だ。さて、とりあえず今夜はアラン・ドロンとモニカ・ビッティという当時の大スターの共演で、日本でもその主題曲が大ヒットした「太陽はひとりぼっち」のパートを聴いてみた。収録曲はたった4曲だが、この主題曲は強力だ。なにしろこの私ですら覚えているくらいだから当時よほどヒットしたのだろう、またヨーロッパ系のサントラ名曲集みたいなアルバムには大抵収録されているから問答無用の名曲といってもいい。主題曲「ツイスト」ははねるツイストのリズムにのって、哀愁のメロディをサックスが奏でるもので、いかにも日本人が好みそうな曲でもある(大貫妙子の「A Slice Of Life」に入っている「もう一度トゥイスト」という私の大好きな曲はおそらくこれのオマージェだ)。哀愁のメロディというのはイタリアによくあるが、それをツイストのリズムでやったところが斬新で、60年代初頭のヨーロッパ独特の雰囲気が伝わってくるようでなんとも魅力的だ。
まったりとしたリズムにのって、物憂げなアルトサックスがテーマを奏でる2曲目「スロウ」、今時なサントラ・ファンなら喜びそうな、おしゃれなラウンジ・ジャズ風の3曲目「パッセジャータ」は、ほとんどメインタイトルとは異質な音楽だが、映画どうん風に両者は使い分けられていたのだろう?。また4曲目の「ツイスト(ヴァリエーション)」は、おそらくこの映画に充満していたであろう、「魂の孤独」だの「愛の不毛」(どちらもアントニオー二の映画を形容するのに当時流行ったフレーズね)的なムードをいやおうなく想像させる、高度成長期の歪みからうまれた都会に住む人の虚脱感....みたいな60年代前半の時代的雰囲気を甦るような印象的な作品になっている。これはなかなか魅力的だ。
彼が60年代に監督した「情事」、「夜」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」、「欲望」、「砂丘」といった作品は、どれも公開時にほとんど最高の評価を得て、芸術性も高く、しかも客を呼べる監督(だったのだろう)として、一般ににも知られており、そうした知名度、評価が80年代初頭の頃はまだまだ残っていた。ところが、当時、まだレンタル・ビデオなどはまだなく、これらの映画のうち、「欲望」くらいしか私は観ることができなかった。ヴィスコンティやベルイマン、フェリーニなどはまだ新作に併せて旧作がリバイバルされることもあったが、ことに映画にに残る画期的な作品として有名で、かつモニカ・ビッティのアンニュイな美しさが映えたらしい「情事」や「夜」といった作品は、喉から手が出るほどに観たい作品だったが、そのような機会はついぞ訪れなかったのだ....と、なんだかいきなり、話が脱線しているが(笑)、このアルバムは全盛期のアントニオー二作品である「情事」、「太陽はひとりぼっち」、「赤い砂漠」のサントラから構成されたオムニバスである。
音楽は三作ともにジョバンニ・フスコ、全盛期のアントニオー二の作品のかなり部分を手がけている、いわばアントニオー二の音楽面での片腕だ。さて、とりあえず今夜はアラン・ドロンとモニカ・ビッティという当時の大スターの共演で、日本でもその主題曲が大ヒットした「太陽はひとりぼっち」のパートを聴いてみた。収録曲はたった4曲だが、この主題曲は強力だ。なにしろこの私ですら覚えているくらいだから当時よほどヒットしたのだろう、またヨーロッパ系のサントラ名曲集みたいなアルバムには大抵収録されているから問答無用の名曲といってもいい。主題曲「ツイスト」ははねるツイストのリズムにのって、哀愁のメロディをサックスが奏でるもので、いかにも日本人が好みそうな曲でもある(大貫妙子の「A Slice Of Life」に入っている「もう一度トゥイスト」という私の大好きな曲はおそらくこれのオマージェだ)。哀愁のメロディというのはイタリアによくあるが、それをツイストのリズムでやったところが斬新で、60年代初頭のヨーロッパ独特の雰囲気が伝わってくるようでなんとも魅力的だ。
まったりとしたリズムにのって、物憂げなアルトサックスがテーマを奏でる2曲目「スロウ」、今時なサントラ・ファンなら喜びそうな、おしゃれなラウンジ・ジャズ風の3曲目「パッセジャータ」は、ほとんどメインタイトルとは異質な音楽だが、映画どうん風に両者は使い分けられていたのだろう?。また4曲目の「ツイスト(ヴァリエーション)」は、おそらくこの映画に充満していたであろう、「魂の孤独」だの「愛の不毛」(どちらもアントニオー二の映画を形容するのに当時流行ったフレーズね)的なムードをいやおうなく想像させる、高度成長期の歪みからうまれた都会に住む人の虚脱感....みたいな60年代前半の時代的雰囲気を甦るような印象的な作品になっている。これはなかなか魅力的だ。