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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

MIKLOS ROZSA / Three Choral Suites [SACD]

2006年03月13日 21時47分06秒 | サウンドトラック
 ミクロス・ローザが手がけたエピック・フィルムの音楽の中から「ベン・ハー」「クオ・バディス」「キング・オブ・キングス」を各々20分程度の組曲にまとめたアルバムです。ローザのエピック物の映画音楽というのは、その昔にランペルツ指揮のハンブルク・コンサート交響楽団で収録した62年のアルバム(「エルシド」「ベン・ハー」「キング・オブ・キングス」)やデッカからローザ自身の指揮による「ベン・ハー」のスコア盤があったせいか、バレーズサラバンデからもまとまった形で出ていなかった(と思う)ので、カンゼル指揮によるシンシナティ・ポップスの最新録音はまさに待望という他はないでしょう。おまけにここに収録されている組曲は、生前のローザがこれらの映画音楽から「コーラス付きのオーケストラ組曲」にすべく着手したものの(タイトルの「Three Choral Suites」はそれに由来するんでしょう)、彼の死によって未完に終わったものを、改めて完成させたものらしいですから、その意味でも貴重です。

 実際聴いてみると、いつもミクロス・ローザ流のバタ臭い壮大さみたいなところは控えめで、どちらかといえば、メロディックな部分を中心になだらかに広がるスケール感のようなものを重点が置かれた選曲、編曲という感じがします。例えば「ベン・ハー」の序曲など、ランペルツ盤ではファンファーレの後、ガツンと最強奏があってそこから、壮麗なテーマが始まる訳ですが、こちらはファンファーレの後、割とのどかな民衆風な音楽がしばらく続き、その後なだからに例のメインテーマが登場するという感じで、あるゆったりと印象があります。一方、これらの作品の静の部分、宗教的な場面や愛の場面で流れた音楽は、今回の「売り」である合唱も大々的にフィーチャーしじっくりと歌い込まれているという感じです。
 どうしてこういう結果になったのかといえば、構想されたのが作曲者の晩年ということが関係しているのかもしれません。ローザはとても長生きしたので70年代後半くらいまで元気に作曲を続けましたけど、その頃の作品は「プロビデンス」であれ、「悲愁」であれ、かなり枯れた音楽になってましたから、かつてエピック・フィルムにつけたそびえ立つような音楽には、作曲者自身あまりリアリティーを感ぜず、むしろこれらの作品につけた宗教的な部分になんらかの再発見をしたのかもしれないからです。
 私は昔からミクロス・ローザっての作品って、40~50年代のロマンティックな曲を書いていた時とそれ以降のエピック・フィルムを頻繁に担当する時では作風がかなり違うような気がしていたのですが、この作品を聴くと「白い恐怖」と「ベン・ハー」が実にしっくりと繋がるようにも感じるので、ある意味エピック・フィルムといえども、実はこのあたりがミクロス・ローザの本音であったのかもしれませんね。以上、邪推ではありますが。

 最後にSACDの音質ですが、これは素晴らしいとしかいいようがないです。カンゼルとシンシナティ・ポップスの音はこれまで沢山聴いてきましたけど、こんな上品で丁寧な質感の音を聴かせてくれるのは、ひょっとして初めてじゃないですかね。これがDSD録音故なのかどうかはわかりませんけど、ゆったりとした音場に展開されるオケと合唱団が自然に溶け合って、まさに極上のサウンドを形成しています。念のためCD層も聴いてみましたが、さすがにSACD層を聴いた後だと、全体に明度が下がったような、やや見通しが悪いような音に感じます。それだけレンジの広い、明晰な音ということなんでしょうが、こういう大規模な管弦楽になると、やはりSACDの基本性能の良さがモロに出ているとったところです。
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MCLAUGHLIN & DELUCIA, DIMEOLA/Friday Night in S.F.

2006年03月13日 00時13分08秒 | JAZZ-Fusion
 78年に再びエレクトリック・ギターによるフュージョン路線に舞い戻ったマクラフリンですが、翌年には「Electric Dreams」を発表します。おそらく前作「Electric Guitarist」路線のアルバムと思われるのですが、入手できなかったため、ひとつ飛び越えて、例のアル・ディメオラ、パコ・デルシアとのコラボレーション第1作「Friday Night in San Francisco」を聴いてみました。次作以降はともかく本作についていえば、ディメオラとデルシアのコラボにマクラフリンが参加したという経緯のようですから、必ずしもマクラフリンのソロ・アルバムの文脈で聴くべきアルバムではないのかもしれませんが、ともあれ参加しているのは確かだし、三人揃っている時はセンターに陣取ってますから、まぁ、善しとしましょう(笑)。

 さて、このアルバム聴き物はなんといっても、冒頭に収録された「地中海の舞踏~広い河」ということになるでしょう。左チャンネルのデルシア、右チャンネルにディメオラを配したデュエットで演奏されている訳ですが、エキゾチックなスパニッシュ調の曲をふたりしてなぞりながら、ふたりがありったけのギターのテクニックを披露しつつ、絡み合い、せめぎ合い、かつ触発しあうといったインタープレイの応酬による壮絶な11分間な訳ですが、前半はディメオラ、中盤がデルシア、後半の壮絶なインタープレイの応酬はどこをとっても素晴らしいものですが、とりわけ終盤の3分間は筆舌に尽くしがたいエクサイティングさがあります。まさにジャズ史上の残る至福の11分間といえるでしょう。
 2曲目「黒い森」はマクラフリンとディメオラのデュオ。3曲目「フレボ」はマクラフリンとデルシアのデュオとなります。どちらも「地中海」ほどではありませんが、こちらもかなり高テンションです。お相手をするご両人共にマクラフリンが相手だと、一気にソリッドで硬質なムードになるのは、やはりマハビシュヌ発、シャクティ経由のゴリゴリ感をマクラフリン音楽に持ち込んでいるせいでしょうか。前者は比較的音楽的資質が似通っていたせいなのか、お互いの手の内を読み切った余裕のようなものがあり、随所に披露する遊びも以心伝心という感じ。後者はややリラックスしてますが、よくよく聴くとシタール対フラメンコみたいな異種格闘的テンションがあってこれもなかなか凄まじいものがあります。

 最後の2曲はいわゆるスーパー・ギター・トリオによる演奏です。「幻想組曲」はディメオラの作品でバラエティに富んだ小品を集めたトロピカルな作品で、後半の盛り上がりはさすがですが、三人のバトルというよりはかなり計算されたギター・アンサンブルという感じ。最後の「ガーディアン・エンジェル」はライブでなくスタジオ録音のようで、これは明らかにマクラフリンがシャクティの最後の頃のやったような、比較的リラックスした無国籍アコスティック・サウンドのスーパー・ギター・トリオ版といった趣でしょうか。
 という訳で、マクラフリンの盤歴からすると、ここでまたしてもアコスティック路線へ回帰という感じになるんですかね。なにしろこのメンツでもう一枚作ってしまう訳ですし....。ただ、この時期になってくると、そういう区切りもマクラフリンの中では、かつてほどはっきりと峻別しなくなってきているような感じもしないでもないです。
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