■ 白川郷の全景、合掌造りの民家がどれも同じ方向を向いていることが分かります(この写真には写っていませんが一軒だけ例外がありましたが)。棟は南北に向いていて、屋根面が東西を向いています。それは何故?
仮に棟が東西に向いているとすれば屋根面は南北になります。この場合には冬期、屋根雪が南面では融け、北面では融けないので雪の荷重条件が均等になりません。屋根が東西に向いていると、午前は東面に、午後は西面に日があたるので雪がどちらの面でもほぼ同じに融けるため、雪の荷重が均等にかかるので安定します。
障子窓が少し前傾しています。この理由も逆の状態を考えれば分かります。逆、つまり少し障子が後傾していると雨や雪がかかりやすくなります。そう、障子を前傾させるのは雨や雪をかかりにくくする工夫なんです(これ、ホント)。
下の写真に写っている障子も前傾していますね。これも同じ理由です。それと積雪しても障子との間に空隙ができやすく、雪の側圧がかかりにくくなることも理由に挙げることができるでしょう。
鶴岡(山形県)のはっぽうづくりの民家
昔の人たちの知恵ってすごいなって民家を観察するたびに感心します。
■ 友人と白川郷を訪ねたのは1979年の8月のことでした。当時は素朴な農村といった風情で、民家の周りには畑や田圃が広がり庭先には草花が咲き、洗濯物が干してありました(写真)。
民家の周りに私的な領域がきちんと確保されていて、立ち入ってはいけないエリアであることがはっきりと分かりました。その雰囲気は下の写真からも知ることができると思います。
白川郷の合掌造りの民家 197908
先週末の北陸旅行の最後に、白川郷の合掌造りの集落を再訪しました。30年の歳月はすっかりこの集落の表情を変えていました。集落全体の空間の「質」が変わっていたのです。
かつての風情はどこへやら、今や映画のセットのようで生活の営みが感じられません。上の写真と下の写真を比較すると、季節は違っていますが、空間の質の違いがよく分かると思います。
世界遺産に登録され、東海北陸自動車道が開通して観光客で賑わうようになって、民家の周りの私的な領域は失われました。観光客が民家の周りを無遠慮に歩き回るようになってしまったのです。
世界遺産に登録されたことが白川郷の人たちにとって本当に幸せなことだったのだろうか・・・。観光客の少ない集落のはずれを歩きながら考えました。
白川郷 20090412