透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「異次元の遭遇」

2007-10-10 | A 読書日記



『深層社会の点描』筑摩書房 この本の発行は1973年、もう30年以上も前のこと、随分昔の本だ。この本には松本清張の作品の評論が収録されている。

二つの要素(具体的には人)の対照を強調しながら、両要素の遭遇ないし符合を描くこと、つまり異次元の遭遇、これが松本清張の小説の特徴だと著者の作田啓一氏(社会学者)は指摘している。

昨年も書いたと思うが、清張の代表作の「砂の器」や「ゼロの焦点」、「球形の荒野」などは将にこの異次元の遭遇をモチーフにしている。異次元の遭遇によって生ずる悲劇、ドラマ。例えば「砂の器」は主人公の作曲家(TVドラマでは中居君が演じた)と彼の遠い過去を知る現役を引退した警察官との遭遇が生んだ悲劇(殺人)を描いている。

ところで異次元の遭遇は小説や映画(例えば「ET」)の世界だけに限られているわけではない。

以下本題。

建築の世界。例えば老人デイサービスセンターと保育園や小学校との一体的整備、従来全く異なる施設として個別に計画されていた異次元の両者が遭遇することによって新しい価値というか意義が生まれる。ショッピングセンターと映画館との複合施設についても同様の捉え方ができそうだ。あるいは建築とは無縁なところで使用されている材料の建築への応用なども同様。

他の世界にも同様の事例をみることができるだろう。全く無関係な産業どうしの遭遇、例えば医学と農業技術の遭遇。全く無関係な世界に身を置く人どうしのコラボ。

「異次元の遭遇」という視点からの発想、それは新しい産業開発や商品開発など様々な分野で有効のように思われる。


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