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「老化と寿命の謎」を読む

2024-08-14 | A 読書日記


■ 信濃毎日新聞の科学面に2023年1月から2024年4月まで連載された記事「老化と寿命の謎を探る」を基に書籍化された『老化と寿命の謎』飯島裕一(講談社現代新書2024年)を読んだ。ぼくはこの新聞連載記事を毎回読んでいて、本になればいいな、と思っていた。

この本は次の3章で構成されている。
第1章  寿命をめぐって
第2章  なぜ老いるのか
第3章  健康長寿への道  ―  加齢関連疾患とつきあう

第1章  寿命をめぐってでは寿命400年とされるニシオンデンザメや寿命30年のハダカデバネズミなどの長寿動物を取り上げて、寿命を左右する代謝量について解説している。

この中で、なぜ大人になると子どもの時より1日が短く感じるのか、という疑問にも答えている。
代謝量の変化で説明がつきそうだとして、**体温が共通しているヒト同士の代謝量の比較は、体重の違いだけで割り出される。渡辺教授(筆者注:渡辺佑基 総合研究大学院大学統合進化科学研究センター教授 32頁)は、「25キロの子どもと65キロの大人を比較すると、時間の濃度は子どものほうが1.3倍も濃い。大人の1日24時間に換算すれば、子どもの1日は31時間で、7時間も余分にあることになる」と説明した。**(35頁)

哺乳類では世代時間も寿命も、体重の4分の1乗に比例して増える(34頁)という説明から上記のことを計算してみると、時間濃度≒1.2697倍となった(計算違いをしていなければ)。

第2章  なぜ老いるのかでは老化のメカニズムに関する最先端の研究を紹介している。専門的で難しい内容だが、新聞連載中も興味深く読んでいた。残念なことに新聞記事ではカラーだった説明図が本ではモノクロ(白黒)になっている。

自然免疫:好中球 マクロファージ 樹状細胞 ナチュラルキラー細胞
獲得免疫:ヘルパーT細胞 キラーT細胞 制御性T細胞 B細胞
ミトコンドリア、サイトカイン、アポトーシス、オートファジー、ルビコン、エピゲノム・・・

例示したような専門用語は、例えば今年の1月に読んだ『免疫「超」入門』吉村昭彦(講談社ブルーバックス2023年)にも出てきたと思うが、その意味は既に忘れているが、ヒトの体の加齢に伴って自然免疫も獲得免疫も働きが低下するということ、いや免疫機能だけでなくあらゆる機能が低下するということはさすがに知っている。

実に用心深くできている免疫システムの解説を読んでいて、コロナワクチンって免疫システムを混乱させるんじゃないのかなと思った。必要な免疫反応をしなかったり、過剰に反応したり(サイトカインストーム)。『免疫「超」入門』を読んだ時も同じ様に思ったけれど。手足口病などのウイルス性疾患が流行しているのはそのせいじゃないのかな、などと考えてしまう・・・。

第3章  健康長寿への道  ―  加齢関連疾患とつきあうでは、加齢とともに老いる体に表れる様々な病状の解説と、それらと如何につき合うかが論じられている。




2024年1月22日付信濃毎日新聞科学面(9面)より

上掲した新聞記事には「睡眠時間  年齢とともに短く」「無理に寝なくてもいい」という見出しで睡眠時間やその質が加齢に伴って変化することについて書かれている。ぼくはこの記事を読んで、そうなんだと安心感を覚えた。それで記事を取っておいたが、この本でも第3章の17節「眠りをそれほど必要としていない高齢者」に掲載されている。新聞連載時と同じ構成ということが判る。

本書の最後(第3章  第24節)の見出しは「人生の実りの秋(とき)を豊かに過ごすために」。これは高齢の読者へのエールだろう。


 


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