透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

松本城の形式

2024-09-01 | A あれこれ

『城の日本史』や『松本城のすべて  世界遺産登録を目指して』(信濃毎日新聞社2022年)などを読んで松本城の形式について学んだことを備忘録として記しておきたい。


信濃国松本城図(戸田氏時代)


撮影日2020.10.30

 郭の縄張:梯郭と環郭の複合形式   梯郭式 連郭式 環郭式 渦郭式     

 天守の縄張り:梯立式と連立式の複合形式  梯立式(複合式) 連立式(転結式) 環立式(連立式) 単立式(独立式) 
梯には寄りかかるという意味があるという(『城の日本史』91頁)。松本城は天守の東側に辰巳附櫓と月見櫓を付し(寄りかからせ)、北に乾小天守を連立させている(天守と乾子天守を渡櫓で繋いでいる)。

 天守の外観:層塔型 望楼型 
**前期望楼型にみられる下層の大入母屋を改め、やがて層塔型天守で特徴となる寄棟形式の屋根を先駆的に採用している結果とも評価でき、(後略)**(『城の日本史』233頁)

 天守の構造:井楼式通柱構法 (井楼 せいろう) 互入式通し柱構法


 


「城の日本史」を読む

2024-09-01 | A 読書日記

 『城の日本史』内藤  昌  編著(講談社学術文庫 2011年8月10日第1刷発行、2020年9月23日第4刷発行)を読み終えた。やはり今まで知らなかったことを知ることは楽しい。

既に書いたように本書は次のような構成になっている。

第一章 城郭の歴史 ― その変遷の系譜
第二章 城郭の構成 ― その総体の計画
第三章 城郭の要素 ― その部分の意味
第四章 日本名城譜 ― その興亡の図像

第四章には全国各地の29城が取り上げられているが、国宝である松本城ももちろん取り上げられ、特徴などが解説されている。その中で、松本城の形式が梯郭+環郭式平城となっている。本書を読む前に形式を示すこの用語を目にしても、どういうものなのか全く分からなかっただろう。

城郭の縄張は「梯郭式」「連郭式」「環郭式」「渦郭式」にタイプ分けされるが(第二章で解説されている)、松本城は「梯郭式」と「環郭式」の複合タイプとのこと。このことが解り易く描かれた絵図が『松本城・城下町絵図集』松本市教育委員会(2016年)に載っている(過去ログ)。


信濃国松本城図(戸田氏時代)北を上にして載せた。

本丸をコの字形の二ノ丸(*1)が囲み(上図)、更にその外側を三ノ丸が二ノ丸と同じコの字形で囲む形式を梯郭(ていかく)式、本丸を中心に二ノ丸、三ノ丸が共にロの字形で囲む形式を環郭(かんかく)式という。

上図で解る通り、松本城の場合は本丸を囲む二ノ丸が梯郭式、三ノ丸(松本城では台形を逆さにした形をしている)が環郭式となっている。このような複合形式を梯郭+環郭式というとのことだ。 

『松本城・城下町絵図集』を買い求めたのは2016年5月だが、その時は何の知識も無く、ただ漫然とこのような絵図を見ているだけだった。やはり知らないことは見えない。


国宝 松本城 撮影日190117

絵図には本丸を囲む内堀、その外側の外堀、さらにその外側の総堀が描かれている。だが、現在は外堀の西側、それから南側の半分くらいが埋め立てられ、また総堀は大半が埋め立てらている。だから、梯郭+環郭式という形式であることは現状からは分からない。


松本市立博物館常設展示室の松本城下のジオラマ 撮影日2023.10.25

本書を読んでいれば松本城下のジオラマも上の絵図に描かれていることが解るように、総堀を全て入れて南側から撮っただろうに・・・。

本書を読んで知識を得たから城の見方も変わるかもしれない。来年1月に小倉城を見るのが楽しみになった。旅行直前に復習しなければ・・・。


*1 『城の日本史』では二丸と表記されている。