透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

坂井 真智子 布絵展「季節を巡る」

2024-06-05 | A あれこれ


 池田町のカフェ 風のいろを会場に、5月11日に始まった布絵作家・坂井真智子さんの個展「季節を巡る」は昨日(4日)が最終日だった。




昨日の午後、在店していた坂井さんと話をすることができた。

坂井さんが惹かれる風景の特徴が上の布絵から見て取れる、と坂井さんに話した。それは重層的構造の風景。もちろん他の構造の風景の作品もあるけれど・・・。上の作品。近景は一番手前の黄色い菜の花畑、中景はその丘を下った先にある針葉樹の林、ゆったりと流れる千曲川(たぶん)、遠景は山際の集落。そして一番遠景に2層の山並み。

布による風景の創作。絵で表現するより制約が多いだろうと思う。自由にならない色や形。そう、形にも布という素材による制約、糸で縫うなどして固定することなどの制約がある。それ故、グラフィックで抽象的な作品になるのではと思うのだが、違う。坂井さんは布のテクスチャーや柄を実に上手く活かしている。


小品を買い求めて自室に飾った。近くで観ると確かに布だけれど、少し遠くから観るとリアルな風景(ぜひスマホやパソコンの画面から離れて見てください)。

この作品も重層的構造の風景で山が3層重なっている。

1層目。近景は粗い織り目、紺地に白い菱形格子。格子の中に白い菱形。近景では山も樹木など細かなところまで見えるから、絹地のような均一で細かな布では表現できないだろう。

2層目。山並み。濃い緑とその右の明るい緑が今ごろの山の表情を上手く出している。左側の白は北斜面に残る雪。雪の右のグレーもなんだかリアルな山の表情だ。

3層目。遠景の山並みはレイリー散乱と呼ばれる現象によって青みを帯びて見える。青い布によってそのことが表現されている。山肌の白は残雪。不思議なのは層と層の間に空間を感じ、奥行き感があること。手前の山と奥の山は相当離れているように見える。

明るい空に白糸で雲が表現されている。

縦横約5cmの正方形に表現された重層的構造の初夏の風景。ただし以上は私が作品から読み取ったことで、坂井さんの創作意図とは違うかもしれない。

作者の手から離れた作品は鑑賞者に委ねられる。どのように解釈しようがかまわない。水彩画では無理、油彩画でも無理。布でしか表現することができない魅力的な風景。いいなぁ。

※ 坂井さんから作品撮影およびブロ過グ掲載の許可を得ています。


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