透明タペストリー

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「優しいコミュニケーション」

2023-06-06 | A 読書日記

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 『優しいコミュニケーション 「思いやり」の言語学』村田和代(岩波新書2023年)を読んだ。社会生活の基本はコミュニケーション。だから本書に興味を持った。著者の村田和代さんはコミュニケーション系の社会言語学が専門の研究者。現在(2023年の時点で)龍谷大学政策学部教授。

本書で村田さんはコミュニケーションにおける優しさとはどういうことなのか、論考している。コミュニケーションに限ったことではないが、優しさとは相手を思いやり、相手の立場になるということ。取り上げられているのは「雑談の効用」「あいづちの役割」「オンライン会議のやりずらさ」などコミュニケーションに直接関係することだ。

本書で紹介される具体的な考察事例にはニュージーランドと日本の会社の会議前の雑談の違い、コロナ禍初期の安倍首相、小池都知事、吉村大阪府知事が記者会見で使った言葉や表現の違い、さまざまな会議におけるファシリテーターの役割などがある。

さまざまなコミュニケーションについて、共通点を見出し、一般論として論ずること、理論化することも目指すと村田さんは書いておられる。対象がものであれば、例えば「考現学」の今 和次郎のように対象物をたくさん蒐集することもできるだろうが(それはそれで大変だとは思うが)、コミュニケーションの場合、会話の様子を録画・録音するなどして集めて分析するのは容易ではないだろう。サンプル数が少ないと一般論として論ずることはできない。

本書を読んで残念に思ったことは本文にカタカナことばが多用されていること。

スピーチ・アコモデーション、ポジティブ・ポライトネス、ブレイクアウトルーム、フィッシュボール形式、ピア・レビュー、話し合いのメタ的な側面、トピックセンテンス、オリジナルポートフォリオ、マルチパートナーシップ、ミスコミュニケーション、コミュニケーションパターン、ストラテジー、・・・。

たとえ日本語では表現が困難な概念であっても、これらのカタカナことばに疎い一般読者を思いやり、「優しい」説明をして欲しいな、と思いつつ読んだ。


 


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