松本市今井 2023.06.03
■ この国の風景の特徴は「水っぽさ」にあると思う。乾いた風景なら油彩画が相応しいのかもしれない。だが、この国の瑞々しい風景、そう、水が張られ、田植えの済んだ田んぼがあるような風景は水彩画が相応しい、とぼくは思っている。
■ 立位と椅坐位とでは視点の高さが変わる。日常生活では風景を立って見ていることが多い。だから普段は座らず立ってスケッチする。だが、この時は簡易な折りたたみ椅子を持参して田んぼより1メートルほど高い所に腰かけて描いた。遠景だから視点の高さはそれ程関係ない。
朝ドラ「らんまん」で万太郎が植物を線描するところを見て、手前に雑草(名前は分からない)を描き入れてみた。写真①のようなアングルで描いているから雑草は入らないけれど、スケッチだからいかようにもなる。
建築デザインのエスキース(スケッチ)では決定的な線を探すために繰り返し何本も線を引く。だが、眼前の風景には決定的な線がすでにそこにある。だから、線描では決定的な線を一気に引きたい。例えば鳥獣戯画の動物のように。さぐるように、そう、さぐるように何本も引く方法は対象物の輪郭を曖昧な状態に表現するのにはいいのかも知れないが、そのような場合でもぼくは輪郭をきっちり描きたい。
着色も以前は現場でしていたが、最近は自宅でしている。水彩絵の具は含ませる水の量で色の濃淡や表情が変わる。遠くの山や木は水を多く含ませて薄く、そして変化をつけず均一に着色する。近くの木は水を少なめにして色の変化や影を表現する。空気遠近法を意識した着色。絵の具と同じように水滴をパレットに落とし、筆先の絵の具に適量の水滴をつけて着色する。この技は有効だ。
空をもっと爽やかに描きたい・・・、田んぼの瑞々しい表情を表現したい・・・。なかなか思うような表現が出来ない。でも、そのことが楽しい。
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