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「Kちゃんしばらく。元気にしてた?」
「私はいつも元気ですよ~っ U1さんは?」
「元気、元気と言いたいところだけど、ちょっとお疲れモードかな」
「もう若くないんですから、無理しないように」
「ええ? なんだよ、若くないって(笑)。まだまだこれからなのに。Kちゃん、今日はすっかり休日モードな服装だね」
「カワユイでしょ。U1さんはアイスコーヒーって飲まないんですか?夏でもホットですね」
「そう、アイスコーヒーってホットコーヒーとは別の飲み物でしょ。飲まないね。ホットコーヒーのみ、混和剤なし!」
「混和剤って?」
「ミルクとか砂糖とか」
「いつもブラックでしたっけ」
「そ、ブラック」
「U1さん、この頃ブログに蔵のことよく載せてますね。なんだか私あんまり興味がなくて・・・」
「おいおい、ちゃんと読んでよ。ところでKちゃんってマンションでひとり暮らししてるんだよね」
「ええ、9階建ての5階。場所は秘密」
「独身貴族してるんだ」
「そんな、質素な暮らしですよ、ひとり寂しく・・・」
「9階建てだとSRCかな、いやRCか」
「SRCって?」
「鉄骨鉄筋コンクリート造」
「そうなんだ。外壁はタイル貼りですけど」
「日本って明治になるまでは木造建築しかなかったんよね。奈良の大仏殿だって、松本城だって、みんな木造」
「ええ。民家は屋根まで草や木で出来てましたね」
「そう、でね、もし明治になっても近代建築、鉄筋コンクリート造や鉄骨造の導入を拒んでさ、木の文化を守るということで、木造だけしか認めなかったとしたら、日本の国って社会構造が今とは全然違ったと思うね」
「・・・」
「東京に人口の1割が集まるなんてことも当然なかったわけだ、高層マンションが出来なければこれだけの人口集中は無理だからね。地方に分散するしかない」
「確かにそうですね。オフィスビルも高層が出来なければ多くの人が集まることは、出来ないですね」
「でしょ。国会議事堂だってもっと小さなものしか出来なくて、議員の数だってずっと少なかったかも知れない。あるいは審議のシステムが今とは違うとかさ」
「確かにそうですね。建築のキャパが条件になりますね」
「木造だけだったら、木の需要がいくらでもあるんだから、林業が今のように廃れることもなかっただろうね。治山がきちんとできて・・・」
「でも、そんな社会なんて考えられないですよ。鎖国している訳じゃないから、今のような国際社会で」
「もちろん、現状からすれば突拍子もない発想だけど」
「木って再生できる唯一の資源だよね。鉄もコンクリートも有限な資源だけど、木は植林して育てて資材として使って、そこにまた木を植えてってやっていけば、いくらでも使える」
「ええ、そうですね」
「木造だけの、健全、エコロジカルな都市、いいでしょ。日本はそういう木の文化を延々と続けてきたんだよね。たった百数十年前までは。防災のために木の不燃化がもっと進んで、密集を避けるような法規が出来て、空地が緑に・・・。それが、いまじゃね木の模様のついたビニルクロスとか天井材、プラスチックの廻り縁や幅木・・・。まがいモノだらけの建築。弁当買えば、木の模様をプリントしたプラスチックの容器・・・、住宅の寿命はアメリカの半分、イギリスの三分の一。25年で、解体、そしてゴミ・・・」
「U1さん、嘆いてる・・・」
「そう、いまや複雑な継手や仕口は刻まない、ノコギリを目立てもせずに使い捨てする大工さんがいるとか・・・」
「U1さん、建築だって明治時代に他の自然科学なんかと一緒に学問としてヨーロッパに学んで取り入れたんでしょ。でも、千年以上も続いてきた木の文化があったのに、いきなりコンクリートだ、鉄骨だといって、木を隅に追いやってしまうこともなかったでしょうに、ねぇ」
「そうだね。木に鉄をつなごうとしてもね・・・。木の文化を学問として体系づけるということはやはり難しかったんだろうね。そうなれば研究の対象外。日本の木の文化を西洋の知では、やはり無理だったかもね」
「・・・」
「五重塔が地震の時どんな挙動をするかなんてきちんと解析できないよ、つまりそういうこと、ね」
「う~ん、よく分からないけど」
「国家的なプロジェクトとして木の文化復興に取り組もう、なんてとても無理だね。車も家電産業もいいけどさ。木の文化を捨去ろうとしているのは残念だね」
「・・・」
「輸送エネルギーを大量に消費して食料や建築資材を地球の裏側から輸入して・・・。弁当大量につくって残って捨てて、住宅は25年で壊して・・・。世界で一番地球に負荷をかけて暮らしているんだよな・・・日本人って」
「・・・、なんだか済みませんって感じ」
「こんな話をするつもりじゃ・・・さて、ビール飲みに行こう!」
「ようやくいつもの中年オジサンになりましたネ」
2009年8月13日の記事再掲