透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「建築家なしの建築」

2011-06-13 | A 読書日記

 建築家にしてエッセイストでもあったバーナード・ルドフスキーの『建築家なしの建築』。この本は1984年に鹿島出版会のSD選書として刊行されたものが一般によく知られているが、1975年に「都市住宅」別冊として出版されている(写真)。



■ 今日(13日)、この煙突を松本市内で見ていてふとこの本のことを思い出した。



訳者・渡辺武信氏はあとがきに**本書は世界各地の無名の工匠による風土的な建築をパノラマ的に紹介したもので(後略)**と書いている。そう、日本も含め、世界各地の「風土的、無名の、自然発生的、土着的、田園的」建築を紹介している。

海岸の小石が繰り返し繰り返し波に洗われて次第に形が丸く整っていくように、建築家なしの建築は建築家に替わって風土が、永い時の流れが、建築に合理的な形を与えたと言っていいだろう。茅葺きの民家もその好例のひとつだ。

**風土的な建築は流行の変化に関りがない。それは完全に目的にかなっているのでほとんど不変であり、まったく改善の余地がないのである。(12頁)**とルドフスキーは本書に書いている。

現代建築の大胆な造形を見るにつけ、その依拠するものは一体なんだろう・・・、と思う。


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2 コメント

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アノニマスな風景 (shin)
2011-06-13 23:04:57
建築家なしの建築は、まさに手を下さないことがこのぐらいな景観になるよ...との事例集。84年当時でも大きく取り上げられました。大胆な造形の意味はコンセプトなく「できちゃった」が実態です。それは机上でなく電脳液晶画面上で偶然の出来事なのです。いい悪いはともかく「形象は走る」が世界の潮流で、僕の場合は、その潮流に俄然反発しながらコンセプト最優先で頑張ってます。
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shinさんへ (U1)
2011-06-15 06:37:19
コメントありがとうございます。
「建築家なしの建築」は当時話題になりましたね。
電脳液晶画面というのは想像力を奪ってしまう側面もありそうですね。
なぜそうするのか、理由を説明できるようなデザインを期待したいです。
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