透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「地域を元気にするために」

2017-10-27 | A あれこれ

 昨日(26日)の夕方まつもと市民芸術館の小ホールで行われた建築家・伊東豊雄さんの講演「地域を元気にするために」を聴いた。まつもと市民芸術館は伊東さんの設計。



講演は伊東さんの作品などを写しながら、それを説明するかたちで進められた。まずスクリーンに映し出されたのは東日本大震災で揺れる「せんだいメディアテーク」の動画。震災直後、被災地を訪れた伊東さん。その後、伊東さんは若い建築家たちと共に被災地の復興計画に取り組み、何棟もの「みんなの家」を計画し、完成させる。

「みんなの家」の計画案を練る過程で提示される若い建築家たちの計画案、建築作品をつくろうとする彼らの案をみて伊東さんは「この期に及んでまだ建築家根性でものをつくるのか」と思ったという。

国の基準に基づく復興事業によって、まちの個性がなくなり、過去の記憶が消され、自然と人間が切り離されていく・・・。復興事業に関わる中で建築に対する考え方、建築観を変えさせられた伊東さんはその後、瀬戸内海の美しい大三島を元気にするためのプロジェクトを地域の人たちと進める。その活動が紹介された。

それからは伊東さんが手がけた作品が紹介された。その中で興味深かったのは水戸市民会館と信濃毎日新聞松本本社のプロジェクト。

水戸市民会館は大断面集成材の構造フレームから成る「やぐら広場」とコンクリートのボックスによって構成されている。このプロジェクトには新国立競技場のコンペでのスタディが活かされているそうだ。

信濃毎日新聞松本本社は来春の完成に向けて現在工事が進めらているが、計画のスタート段階からワークショップによって地域住民と同じ方向を向いて計画が進められたことが紹介された。さしずめ「みんなの新聞社屋」といったところか。

技術によって自然を征服できると考えるのではなく、
自然から祝福される建築をつくらなければならない

講演の最後にスクリーンに映し出されたことばに伊東さんの建築観が示された。

有意義な時間であった。