透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「私の履歴書」を読む

2017-07-02 | A あれこれ

■ 日本経済新聞に建築家の谷口吉生氏の「私の履歴書」が連載されていると聞いて、午前中(2日)に塩尻のえんぱーくで読んできた。6月1日に始まった連載は30日まで、休刊日を除く毎日29日間続いていた。

谷口氏の作品はあまり見ていないが、豊田市美術館、土門拳記念館、法隆寺宝物館が印象に残っている。長野市にある信濃美術館の東山魁夷館も谷口氏の設計。どの作品も隅々まで端正で美しい。水庭が計画されているのもこれらの作品に共通している。「私の履歴書」ではこれらの作品についても触れていた。

以下連載記事を読み進みながら取ったメモから。

谷口吉生氏の父親・谷口吉郎氏も建築家で大学の教授を務めていたが、その時助教授でアメリカから帰国したばかりの清家清氏から「吉生くん、アメリカはいいよ。君も建築をやったらどうだい」と勧められたのがきっかけで建築家を志したそうだ。どうやら父親が清家氏に進言するよう頼んだらしい。

6月11日、11回目の記事から:若いときはアイデアをどうにか実現しようと制約を軽視する傾向がある。一方、年を重ねると新しい挑戦に後ろ向きになるという問題もある。

6月22日、21回目:頑丈な収蔵庫の奥深くにしまい込むだけで、文化財は守れない。(中略)後世に残すべき人類共通の財産という認識を皆が持つためには、文化財を公開してその存在と価値を知ってもらわねばならない。

6月28日、27回目 「GINZA SIX」について:建築の全周に、水平方向に連続するステンレス製の「ひさし」を取り付けた。高さ31メートル以下のかつての町並みを形成する部分には、銀座の町のにぎわいを演出する多様なデザインを「のれん」のように掛けた。(中略)外観を垂直方向に小さく分割する「のれん」は、巨大な建築を無理なく歩行者の町に溶け込ませるための工夫でもある。谷口氏はこの建築で都市計画と外観のデザインに携わったという。

東京には年3、4回出かけているが銀座にはもう何年も行っていない。今度は銀座にも行ってみよう。

6月30日、29回目(最終回):金沢市の寺町に建築と都市のための小さなミュージアムが誕生するそうだ。完成は2019年の予定だという。金沢市が建築文化拠点施設を構想し、谷口氏が父親の生家が立つ寺町の土地の寄贈を申し出たそうだ。ミュージアムには建築や都市に関する企画展示室や父親が設計した迎賓館赤坂離宮の和風別館(洗心亭)の広間と茶室が再現され、いつでも見学可能になると記事にある。

再来年か・・・、ミュージアムがオープンしたら金沢まで出かけたい。北陸新幹線にまだ乗ったことがないから、その時は新幹線で行こう。




会場は忘れたが東京まで谷口氏の作品展を見に行ったことがあった。この作品集はその時買い求めた。






ブックレビュー 1706

2017-07-02 | A ブックレビュー

 信濃毎日新聞6月25日付朝刊の総合面(2面)に「読書1ヵ月で「0冊」33% 全国世論調査 必要性は9割が認識」という見出しの記事が載っていた。日本世論調査会が実施した面接調査で分かったそうだ。全国250地点から18歳以上の男女3000人を選び、6月10・11両日、旅行などで会えなかった人を除き、1727人に調査対象者が直接面接して得た結果だという。

記事には1ヵ月間に読む本の冊数が0~2冊の人が約83%、1ヵ月間の本の購入金額は0円が33%、千円未満が31% という調査結果が示されている。

記事には**本を読めば論理的思考やコミュニケーション能力が鍛えられるし、それなりの見識を持てるようになる**(後略)と、作家・石田衣良さんのコメントが載っている。私はこのような効用を期待して読んでいるわけではない。本を読むことが好きというか、楽しいという単純な理由から。だが、以前と比べて読書量はかなり減った。別に読書は義務でも何でもないから、読みたい本を読みたいときに読むまでだ。


6月の読了本3冊


『敗者の想像力』加藤典洋/集英社新書

日本人は敗戦ときちんと向き合ってこなかった、敗戦を正面から受け止めて思想化してこなかったという認識に立った新たな戦後論。

論考の中で余談的に書かれている「なぜゴジラはいつも日本にやってくるのか」は、なるほど! だった。ゴジラは第二次世界大戦で死んだ兵士たちの体現物として受け止められている。戦争の死者たちは国のために戦った。戦争に負けた後、方向転換した日本に彼らが帰る場所がない。**東京に上陸し、復興なった夜の都市を蹂躙するゴジラの咆哮は、「自分がそのために死んだ国は、どこにいったのだ」、「祖国はどこにいった?」と、嘆いているようにも聞こえる。**(91頁)


『スマイル! 笑顔と出会った自転車地球一周 157ヵ国、155,502km』小口良平/河出書房新社

小口さんが旅の間、大事にしていた魔法の3つの言葉、「こんにちは」「ありがとう」「おいしい」。
食はその国の文化そのもの。「おいしい」はその国の文化を受け入れること。世界中の人びととの交流を通じて得たこの認識には説得力がある。すごい体験を「ドーダ!」とならずに淡々と綴っているところがすごい。ドーダの過去ログ



『ウニはすごい バッタもすごい』本川達雄/中公新書

意味のある体のデザイン

生き延びるための戦略

生き物たちの驚きの世界

本川氏の著書『生物学的文明論』新潮新書、『生物多様性』中公新書 を読みたい。明日注文しよう。