透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

朝カフェ読書

2017-01-27 | A 読書日記



■ 時々出社前にこのスタバで小一時間読書をする。今朝(27日)、2階のいつもの席で『文庫解説ワンダーランド』斎藤美奈子/岩波新書を読む。



この本には昔読んだ庄司 薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』や田中康夫の『なんとなく、クリスタル』も取り上げられている。どちらも若い人は知らない作品かもしれないが『赤頭巾ちゃん』は芥川賞受賞作。『なんクリ』は文藝賞受賞作で、芥川賞の候補にも挙がった作品。

斎藤さんはこの2作品の解説について、**なぜ同時代の批評家は(あるいは読者は)、『赤頭巾ちゃん』や『なんクリ』の読み方を、そして評価を見誤ったのだろうか。理由はたぶん簡単である。「要するにナメていた」のさ、と断じ(126頁)、替わって、なるほど!な解説をしてみせる。**知識人/大衆という線引きが失効した時代に、自分は知識人としていかに生きていったらいいのか。それが『赤頭巾ちゃん』の命題だった。**(同頁)

これだけズバリ指摘してあると、読んでいて気持ちが良い。明日も続きを読む。


 


「文庫解説ワンダーランド」斎藤美奈子

2017-01-27 | A 読書日記

 書店の新書のコーナーに並んでいた斎藤美奈子さんの『文庫解説ワンダーランド』/岩波新書を買い求め、早速読み始めた。



カバー折り返しの紹介文は次の通り。**基本はオマケ、だが人はしばしばオマケのためにモノを買う。夏目漱石、川端康成、太宰 治から、松本清張、赤川次郎、渡辺淳一まで。名作とベストセラーの宝庫である文庫本。その巻末の「解説」は、読者を興奮と混乱と発見にいざなうワンダーランドだった! 痛快極まりない「解説の解説」が幾多の文庫に新たな命を吹き込む。** 

斎藤美奈子さんの「解説メッタ斬り」は実に鋭く、手厳しい。例えば川端康成の『伊豆の踊子』、『雪国』についてはこうだ。**三島由紀夫や伊藤 整のようなタルい評論は、今日の文芸批評界ではほとんど目にしなくなった(そうでもないか)。いまやほとんど骨董品。その歴史的価値は認めるも、古色蒼然たる解説の前で途方に暮れる読者こそ災難だ。そこで温存されるのは「よくわからないけど、スゴイらしい」という無根拠な権威だけ。文学離れが起きるのも当然かもしれないな。**(29頁)

それに対して斎藤さんは**『伊豆の踊子』が一線を越えずに終わった恋愛未満の物語なら、『雪国』は一線を越えたことで恋愛の不可能に気づいてしまった男女の物語だった。としたら両者は一対の物語だったのかもしれない。**(同頁)と、なるほど!な解説をしてみせる。

週末はこの本を楽しもう。