透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

バナナと同じ

2012-07-22 | A 読書日記

 コンクリートは圧縮力には強いが引張力には弱い。一方、鋼管は引張力には強いが圧縮力には弱い。その相反する特徴を持つ両者を組み合わせることによって互いの短所を補完しあっているのがコンクリート充填鋼管構造だ。

既に何回か書いたことだが、人が考えるものは自然が先回りしてつくっている。では、このコンクリート充填鋼管構造に相当する自然のものとは一体何か・・・。


『図解 橋の科学 なぜその形なのか?どう架けるのか?』土木学会関西支部編/講談社ブルーバックス

この本では橋がどのような設計をもとに、どのような技術によって架けられているのかを、中学生くらいから理解できるように平易に解説している。そのセクション4の「橋と力学」に次のくだりが出てくる。

**圧縮や引っ張りに対する強さは、材料によって違います。石の場合、圧縮に強くて引っ張りには弱いことが分かっています。写真5―5は、皮をむいたバナナと、皮のついたバナナをそれぞれ曲げたものです。この写真からバナナのどんな性質がわかるでしょうか。
曲げの力がはたらくと内側が圧縮、外側が引っ張りの力を受けるのでした。皮のないバナナは外側で切れているので、引っ張りの力に弱いことがわかります。ところが皮は引っ張りに強く圧縮に弱いので、皮のついているバナナでは、逆に内側がつぶれているのです。**(60頁)

ここを読んでいて、そうか、コンクリート充填鋼管構造ってバナナと同じなんだ!と気がついた。


以前書いた類似の記事

技術者の設計の最適解は自然が既に用意してあるということについて、思い浮かぶのは竹だ。

鉄骨構造の柱と梁のジョイント部分にはダイアフラムを設けるが、竹は節という名前のダイアフラムのところから枝(持ち出し梁)を出している!自然は優秀な構造設計者だ。


 


― 松本市内の火の見櫓

2012-07-22 | A 火の見櫓っておもしろい

 この火の見櫓の所在地は松本市中央4丁目、松本勤労者福祉センターの前。既に一度載せているが、そのときは銘板に気がつかなかった。





見張り台を支える櫓上端の構造、かなりゴツイ。見張り台の床から4本の柱材を立て、屋根の下地材、半鐘の受け材と接合している様子が分かる。そう、これは櫓のてっぺんに屋根と一体の見張り台を載せるという実にレアな構造。


撮影 120721

脚部に付けられている銘板 「松本市白板 中央工業株式會社 大正十五年十月製作」と読める。

建設されてから既に80数年。長い年月人びとの暮らしを見守り続けてきた火の見櫓。これからは地域の人びとが火の見櫓を大切に見守っていかなくてはならないだろう・・・。


現存しない。(191218追記)


「東京都美術館ものがたり」

2012-07-22 | A 読書日記

 15日の日曜日、日帰り東京した。朝7時前、正確に記すと松本6時51分発のスーパーあずさで出かけた。

フェルメールが描いたあの少女に会うことと消防博物館の見学が目的だったが、上野の東京都美術館は長蛇の列でフェルメールの少女はあきらめた。それで偶々開催中だった「東京都美術館ものがたり」という企画展を観た(9月30日まで開催)。

東京都美術館に関係の深い人たちの作品展で、佐伯祐三、藤田嗣治、東郷青児、赤瀬川原平、日比野克彦ら有名な作家の作品が展示されていた。

無知をさらすが、私はこの美術館誕生の経緯を全く知らなかった。だから九州の石炭商で、美術館の建設資金を寄付した佐藤慶太郎のことや、旧館設計者の岡田信一郎を紹介する展示はありがたかった。

会場には旧館の図面や模型、正面玄関の写真なども展示されていて、興味深かった。新館の改修前と改修後の大きくて精巧な模型も展示されていた。一体どこが違う? 間違い探しクイズのような感覚でふたつの模型をながめた。

展示から新館設計者の前川國男の慧眼、建築かくあるべしという理念にも触れることができた。

前川國男は70年代に美術館・博物館をいくつか設計したが、共通するのはキューブによる群造形と打ち込みタイル。吉岡徳仁がデザインした都美術館のシンボルマークがこの特徴をシンプルに表現しているのはさすが。

大正15年に誕生したという東京都美術館。今回観た展覧会は東京都美術館の老舗としての自負というか誇りを感じた。


『東京都美術館ものがたり』東京都美術館・編/鹿島出版会 

次回はこの美術館のカフェと上野公園にできたスタバを体験しよう・・・。