透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

ブックレビュー 1206

2012-07-01 | A ブックレビュー



 6月のブックレビュー、読了本7冊。

『見えがくれする都市』槇文彦他/鹿島出版会SD選書

今から30年以上も前に出版された本だが、いまだによく読まれているようだ。名著と言っていい本だろう。Ⅴ章 槇文彦の「奥の思想」という論考が一番知られていると思うが、今回再読して興味深かったのはⅣ章 大野秀敏の「まちの表層」だった。

日本では住宅地において、道路(公的空間)からいくつもの薄い層(例えば竹垣、のれん、格子、障子など)を重ねて次第に住宅内部(私的空間)へ空間の質を変えているが、このことについていくつかのタイプに分類し、まちの表層について論考する。これがヨーロッパだと厚い層、つまり壁1枚で行われる。「層」という視点で街の空間構成を観察して歩けば面白そうだ。


奈良井宿 撮影060708

『ま、いっか。』浅田次郎/集英社文庫

エッセイ集。

「目だけ美人」の氾濫 **いかに目鼻が秀でていようと、肌が美しかろうとパーツの配列が正しかろうと、口元が悪ければ全てが悪い、とまで言える。(中略) 絶世の美女と謳われる女優さんなどは、洋の東西を問わずこの口元が美しいことに例外はない。(中略) まさしく口元の良さこそ「七難を隠す」のである。**(53、54頁) この指摘が印象に残った。

先日、ロンドンオリンピックの女子バレー選手、確か12人が選出されたと新聞に出ていたが、選手たちがコートに立つと途端に美しく輝いて見えるのは、口元をギュッと引き締めているからかもしれない。そう、みんな口元美人になるのだ。

『はじめての〈超ひも理論〉』川合光/講談社現代新書
『重力とは何か』大栗博司/幻冬舎新書

時間や空間に関する最先端の理論。共に物理好きの高校生や大学生に分かりやすく(こちらの理解力も大いに関係するが)説く。

『重力とは何か』はよく売れているようで、今日(1日)の新聞の読書欄を見ると、八重洲ブックセンター本店の売れてる本10冊に入っていた。

光の波と粒の両義性を「ルビンの壺」、1枚の絵が壺にも向き合うふたりの横顔にも見えるという例の絵を取り上げて説明するなど、著者の喩えや説明は実に巧みだ。

『東京レスタウロ 歴史を活かす建築再生』民岡順朗/ソフトバンク新書

「レスタウロ」は聞き慣れない言葉だが、副題の「歴史を活かす建築再生」という意味だと理解していいと「はじめ」に書いてある。東京のレスタウロ50の紹介。

下の写真は松本のレスタウロ。古い薬局をカフェ、ギャラリーへリノベーション(用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりすること)した。



『蜩ノ記』葉室 麟(はむろ りん)/祥伝社

感涙。今年前半のベスト作品。

『建築と言葉』小池昌代・塚本由晴/河出ブックス

小池昌代という名前を見て購入、読了。ふたりの対話、よく分からなかったが、ま、いっか。

さて、7月。今年後半はどんな本と出会うことができるだろう・・・。


 


272 安曇野市豊科の火の見櫓

2012-07-01 | A 火の見櫓っておもしろい

 
272  安曇野市豊科下鳥羽

 火の見櫓を写真に撮ろうとする場合、いいアングルだと思っても逆光だったり、電線や後方の建物などが邪魔だったりすることがあり、仕方なく別のアングルで撮ることがよくあります。この火の見櫓の場合は、説明的な写真を撮るならこのアングルがいいと思いました。脚元の白いガードが気になりますが・・・。

順光の場合は撮りやすいですが、明るい空が背景になると、どうしても火の見櫓が暗く写ってしまいます。その場合は別の方向、例えば樹木などの少し光量の少ないところにカメラを向けて露出を決めてから、カメラを火の見櫓に向け直してシャッターを切ります。私がしている簡単な露出補正の方法です。あとで、パソコンで露出を補正してもいいのでしょうが・・・。

この火の見櫓、ブレースのリングが少し大きいようです。



屋根と見張り台のバランスの良否も気になるところです。火の見櫓の近くから見上げるようなアングルで写真を撮ると、両者が重なってしまって、バランスが把握しにくくなりますから、レンズを望遠にして少し離れたところから撮った方がよいと思います。半鐘が柱の陰にならないようにしたいです。

この火の見櫓の見張り台まわりはすっきりしています。シンプルな手すり。スピーカーも消火ホースを引き上げるモーターもありません。昔ながらの素朴なデザインの照明器具は私の好みです。



見張り台の高さは10メートルくらいでしょう。梯子のステップの高さから推測しました。脚部はアーチ材と斜材のシンプルな構成ですが、好みは脚元がこのような単材ではなく、トラスだということは既に何回も書きました。

1 櫓のプロポーション ★★★
2 屋根・見張り台の美しさ ★★★ 
3 脚の美しさ ★★★

脚には厳しいです。


 


271 大町市の火の見櫓

2012-07-01 | A 火の見櫓っておもしろい

 
271 撮影 120629

 大町の火の見櫓で櫓の外の梯子に、・・・、名前が分かりませんが、籠状の囲いが付けられているものを何基か見ています。

大町合同庁舎のすぐ近くの火の見櫓。工場でしょうか、大きな建物の影にひっそりと立っていますが、背が高いので遠くから見えました。

3角形の櫓、6角形の屋根と見張り台。これも4角形の櫓、4角形の屋根と見張り台と共にごく標準的な型です。



 


270 辰野町の火の見櫓

2012-07-01 | A 火の見櫓っておもしろい

 辰野町は蛍の名所として知られ、毎年この季節にほたる祭りが開催されています。それから、しだれ栗も有名です。同町のHPによると、「子供たちが楽に栗が取れるように、弘法大師が枝を下げてくれた」と伝えられているそうです。しだれ栗は国の天然記念物に指定されています。残念ながらまだ蛍の乱舞もしだれ栗も見たことはありませんが。

辰野町役場の近く、天竜川の護岸際でこの火の見櫓を見つけました。火の見櫓センサーの感度は良好です。

 
270 辰野町辰野 撮影 120630

4角形の櫓に4角い屋根と見張り台、どうやらこれが南信方面(長野県は北信、中信、東信、南信という4つの地域に分けられます。西信はありません)の標準的な型のようです。3角形の櫓をこちらでは見たことがないような気がします。このことについては、いままで撮りためた写真を全て確認すればわかるでしょう。

ところでこの火の見櫓、プロポーションはいいのですが、全体的に錆びているのが気になります。



踊り場のところに「辰野町 第八分団」と切り文字で表示されています。この町でこのように分団名を切り文字で表示している火の見櫓を他にも何基か見ました。



分団員の手づくりではないか、と思うのですが・・・。機会があれば取材して確認したいと思います。

火の見櫓巡りはまだまだ続きます。