透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「マンダラの謎を解く」を読む

2009-06-09 | A 読書日記

 しばらく前に読んだ『日本庭園 ―空間の美の歴史』小野健吉/岩波新書の一番の!!は**大自然の景観を縮模しつつ具体的かつ明快に表現する手法は、先に述べた「山水画の三次元化」と捉えることも可能であろう。**という指摘だった。つまり「山水画という平面的な世界を三次元的に表現する枯山水」という捉え方の提示だった。
 



『マンダラの謎を解く 三次元からのアプローチ』講談社現代新書を読み始めた。

マンダラって何? 新明快国語辞典では**おおぜいの仏や菩薩を、教理に従って、模様のように描いた絵**と説明されている。そう、平面的な絵なのだが、この本で著者は**石窟こそ、まさに立体三次元空間のマンダラをずばり体現するものだった。**と指摘している。

時代は石窟のほうが古く、密教マンダラ図絵が生まれるより前に、マンダラは建築空間としてあったということになる、ということなんだそうだ。「石窟というマンダラ空間を二次元的に表現するマンダラ絵図」 枯山水とは逆で、マンダラには三次元表現の二次元化というの流れがどうやらあった、ということだ。

飛鳥寺などの伽藍配置もマンダラ世界の表現という指摘 もしている。建築家ならではの見方かもしれない。

この手の本の「なるほど!な説」は実に面白い。以前この著者による『法隆寺の謎を解く』ちくま新書を読んだが眉唾な説では決してなく、実に説得力があった。この『マンダラの謎を解く』も同様で、具体例を提示しながら展開される論考には説得力がある。

今週はこの本を隙間時間読書する。