■ 3月、最初の読了本はこの2冊。
『日本庭園 ―空間の美の歴史』小野健吉/岩波新書
日本庭園通史。時代の美意識を反映しながら姿を変えてきた日本庭園。古代、中世、近世、近現代と時代を追いながら庭園の変遷を論ずる。
庭園の原初は縄文時代に求めることができると著者。祭祀もしくは儀式に用いる空間という機能面からの要請が庭園出現の前提ということだ。
**大自然の景観を縮模しつつ具体的かつ明快に表現する手法は、先に述べた「山水画の三次元化」と捉えることも可能であろう。**
著者は十五世紀の中頃に山水画の理念と技法を三次元化した枯山水が禅宗寺院の庭園に造られ始めたようだ、と書いている。
「山水画を三次元的に表現した枯山水」 こういう捉え方、好きだ。この捉え方に出合っただけでこの本を読んだ意味があったと思う。
ただ、以前『「縮み」志向の日本人』を読んだ者として、自然を縮めて庭園にし、さらに縮めて盆栽に、そしてさらに二次元化して山水画にした・・・、という流れ(時系列上無理かもしれないが)と捉えることが可能なら、それこそすごい!!面白い!!となったと思う。
庭園などの写真が何カットも載っているが、どれもやや大きめの切手くらいのサイズで分かりにくいのが残念。
『森林の崩壊 国土をめぐる負の連鎖』白井裕子/新潮新書
新書はタイトル勝負。書店で平積みされていた本書のタイトルと帯のコピーを見て購入。平易な文章で読みやすい。
**リアルな社会を支える仕組みは、実態を動かしている現場の当事者にとり、シンプルで分かり易いものが良い。人に右から左へと指示するだけの作業、人がしている事を見るだけの作業は、減らす方向で社会の仕組みを考えていくべきだろう。(中略)危険を冒して山に入り、木を切っている人より、書類をめくっているだけの人がえらいというのは妙な光景だろう。** ヨーロッパと日本の林業の実態の違いを見てきた著者の怒りに近い感想だろう。
伝統的な木造文化に背を向けた建築基準法、大工棟梁たちが訴えるその矛盾については2章も割いて書いている。
**森と木をめぐる問題を知り、それを解こうとすると、祖先が趣向を凝らしてきた自然と生活や産業との関係に行き着きます。豊かな自然環境と共にあった生活文化や産業文化を守り、発展させていくことにも繋がるでしょう。(中略)筆者も研究者として、建築家として、そして一人の日本人として、日本の森と木の文化を守り、育てる事に力を尽くしていきたいと思います。**
著者の真摯な姿勢に拍手!