最近生まれた赤ちゃんのお父さんたちです。
みなさんが寝ている間に生まれたのですが、2人の赤ちゃんはほとんど同時刻に生まれました。
今日は月曜日なので、不妊症の話題と致しましょう。
生理痛がひどい方、と言えば まず子宮内膜症が疑われます。
若い女性の10人に1人は子宮内膜症で、軽い場合も含めれば7人に1人とも言われるからです。
症状は生理痛です。それと不妊症なのです。
不妊で来院されて、一通りの不妊検査をして、この子宮内膜症が有ると、
治療方針で悩むことが有ります。
子宮内膜症それ自体のお話は、婦人科の話題で何度もお話しています。
それでも簡単に言えば、本来子宮の中に有る子宮内膜です。
毎月分厚くなって、受精卵が来ると迎え入れる、ベッドのようなものだと言われます。
このふかふかのベッドも、受精卵が来ないと毎月流されてしまうのですね。
この子宮内膜が、子宮の外にできてしまうと、子宮の外で月経が起こってしまうのです。
卵巣にできれば、卵巣に出血の塊ができてしまうのです。
これを卵巣チョコレートのう胞と呼びます。
のう腫ではなく、のう胞ですからね。腫瘍ではなく血が溜まっただけ、という意味です。
子宮内膜が子宮の筋肉の壁の中にできてしまうと、子宮腺筋症と呼びます。
子宮が大きくなるので、子宮筋腫と同じような症状が出ます。
子宮の外側の周りや、子宮を支えている靭帯にできてしまうと、外性子宮内膜症と呼びます。
後ろの直腸と癒着して、月経困難症となってしまうのです。
たまに外科で、直腸がんと誤診されて手術されてしまうことも有ります。
前置きが長くなりましたが、子宮内膜症が有ると、卵管が詰まってしまったり、
排卵してダグラス窩(か)という窪みに落ちた卵に悪さをすることも有ります。
卵巣のチョコレートのう胞が大きくなると、正常の卵巣が圧迫されて、
卵巣の働き自体が抑制されることも有ります。
だから不妊症になってしまうのですね。
子宮内膜症が軽い場合は、迷わず不妊治療を優先させます。
それは妊娠すると、それだけで子宮内膜症が治ってしまうか軽減してしまうからです。
妊娠することが、一番の治療になるわけですね。
一般不妊治療が奏効せずに体外受精をしなくてはいけないような時は、
数ヶ月、子宮内膜症の薬物療法をしてから体外受精にうつることも有ります。
問題は、卵巣のチョコレートのう胞がかなり大きくなった場合です。
腹腔鏡というカメラで、お腹から手術してしまってから不妊治療を続けるか、
のう胞は放っておいて、不妊治療を優先するか迷うことが有るのです。
どちらも体外受精の治療成績に良し悪しは認められないとされていますが、
大きくなると、やはり腹腔鏡手術を優先するのが一般的です。
妊娠を希望されない若い女性では、最近はピルを処方することが多くなってきましたが、
ピルをのみながらでは当然妊娠しませんので、
妊娠を希望される場合は、タマル産では、漢方薬を飲みながら排卵誘発剤を使用したりします。
漢方薬でもケイシブクリョウガンなどは、月経周期が延びる傾向が有るので、
排卵誘発剤は併用したいところです。
子宮内膜症が軽い場合はトウキシャクヤクサン単独などもいいでしょうね。
むかし天理で、子宮内膜症の不妊の方に、お腹から顕微鏡手術をしたことが有ります。
天理よろづ相談所病院の産婦人科では第1号の症例だったのです。
京大病院での経験を活かして、私が初めて天理に取り入れたのですが、
この女性は術後、すぐに妊娠されました。
ただしこれは今で言う、腹腔鏡手術ではありません。
腹腔鏡手術はあくまで卵巣のチョコレートのう胞を吸い出すだけですから。
先の症例は詰まった卵管を再開通させる手術で、小さくですがお腹を切る必要が有るものです。
いずれにしても、診察した医師から子宮内膜症の状態の説明と治療方針の説明を受けてくださいね。