竹取翁と万葉集のお勉強

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万葉集 集歌759から集歌763まで

2020年07月27日 | 新訓 万葉集
集歌七五九 
原文 何 時尓加妹乎 牟具良布能 穢屋戸尓 入将座
集歌759 何 時尓加妹乎 牟具良布能 穢屋戸尓 入将座
訓読 如何(いか)ならむ時にか妹を葎生(むぐらふ)の穢(きた)なき屋戸(やと)に入(い)り座(いま)せてむ
私訳 いつ、どんな機会に、妹である貴女をこの葎の生える薄汚れた家にお迎えできるでしょう。
左注 右、田村大嬢坂上大嬢、並是右大辨大伴宿奈麿卿之女也。卿、居田村里、号曰田村大嬢。但、妹坂上嬢者、母居坂上里。仍曰坂上大嬢。于時姉妹諮問、以謌贈答。
注訓 右は、田村大嬢と坂上大嬢と、並びにこれ右大辨大伴宿奈麿卿の女(むすめ)なり。卿、田村の里に居(す)み、号(な)を曰はく田村大嬢(おほをとめ)なり。ただし、妹(いろと)坂上嬢(をとめ)は、母の坂上の里に居(す)む。仍ち曰はく坂上大嬢(おほをとめ)なり。時に姉妹諮問(とふら)ふに、謌を以ちて贈答せり。

大伴坂上郎女従竹田庄贈賜女子大嬢謌二首
標訓 大伴坂上郎女の竹田(たけたの)庄(たところ)より女子(むすめ)の大嬢(おほをとめ)に贈賜(おく)れる謌二首
集歌七六〇 
原文 打渡 竹田之原尓 鳴鶴之 間無時無 吾戀良久波
訓読 うち渡す竹田(たけだ)し原に鳴く鶴(たづ)し間(ま)無く時(とき)無し吾が恋ふらくは
私訳 広々と広がる竹田の野原に啼く鶴の声が間無く時を択ばず聞こえるように、間無く時を択ばず私は貴女を心に留めています。

集歌七六一 
原文 早河之 湍尓居鳥之 縁乎奈弥 念而有師 吾兒羽裳可怜
訓読 早河(はやかは)し瀬に居(ゐ)る鳥し縁(よし)を無み念(おも)ひにありし吾が児はもあはれ
私訳 流れの早い川の瀬に居る鳥のように、こちらから逢う機会は無いものと思っていました私の貴女(わが子)よ、実に心残りです。

紀女郎贈大伴宿祢家持謌二首  女郎名曰小鹿也
標訓 紀女郎(きのいらつめ)の大伴宿祢家持に贈れる謌二首  女郎(いらつめ)の名を曰はく小鹿なり
集歌七六二 
原文 神左夫跡 不欲者不有 八也多八 如是為而後二 佐夫之家牟可聞
訓読 神さぶと否(いな)にはあらね早(はや)多(さは)は如(か)くせに後(のち)に寂(さぶ)しけむかも
私訳 年を経て歳老いたと誘いを拒むのではありません。既にそのような歳だからと、そんな理由で恋を拒むとしたら後で悔いが残るでしょう。
注意 原文の「八也多八」を、標準鑑賞では「八多也八多」と校訂します。

集歌七六三 
原文 玉緒乎 沫緒二搓而 結有者 在手後二毛 不相在目八方
試訓 玉し緒を沫緒(まつを)に搓(よ)りに結べらばありて後にも逢はざらめやも
試訳 玉を貫く紐の緒を輪の緒とし縒って結んだら、こうした後も、首から下げる玉の紐が再び緒を結ぶように、再び逢わないことがあるでしょうか。
注意 原文の「沫緒」は標準鑑賞では「あわを」と訓じます。ここでは首飾りの紐の緒が輪を作り末に結び合う姿から「まつを」と試訓を行っています。

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