歌番号 182 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 みつね
原文 川由遣久天 和可己呂毛天者 奴礼奴止毛 遠利天遠由可无 安幾者幾乃者奈
和歌 つゆけくて わかころもては ぬれぬとも をりてをゆかむ あきはきのはな
読下 露けくてわか衣手はぬれぬとも折りてをゆかん秋はきの花
解釈 野辺の草葉は露気を含み、私の衣手は濡れてしまったとしても、それでも野辺で手折って行きましょう、秋の萩の花を。
歌番号 183 拾遺抄記載
詞書 亭子院の御屏風に
詠人 伊勢
原文 宇徒呂者武 己止多尓遠之幾 安幾於幾遠 於礼奴者可利毛 於个留川由可奈
和歌 うつろはむ ことたにをしき あきはきを をれぬはかりも おけるつゆかな
読下 うつろはむ事たに惜しき秋萩ををれぬはかりもおける露かな
解釈 花色や姿が萎れて行くことだけでも残念な、その秋の萩を手折れるほどに重く置くたくさんの露珠の有り様です。
歌番号 184
詞書 三条のきさいの宮の裳き侍りける、屏風に九月九日の所
詠人 もとすけ
原文 和可也止乃 幾久乃之良川由 个不己止尓 以久世川毛利天 布知止奈留良无
和歌 わかやとの きくのしらつゆ けふことに いくよつもりて ふちとなるらむ
読下 わかやとの菊の白露けふことにいく世つもりて淵となるらん
解釈 我が屋敷に咲く菊に置く白露、今日の朝毎にたくさんに置く、その白露は幾世を積み経て、白露は川の淵を満たすでしょうか。(それほどに、長命でありますように。)
歌番号 185 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 みつね
原文 奈可川幾乃 己々奴可己止尓 徒武幾久乃 者奈毛可比奈久 於以尓个留可奈
和歌 なかつきの ここぬかことに つむきくの はなもかひなく おいにけるかな
読下 長月のここぬかことにつむ菊の花もかひなく老いにけるかな
解釈 長月の9日ごとに摘む重陽の菊の花も、その9月9日の重陽の菊の言われの甲斐もなく、私は年老いたようです。
歌番号 186
詞書 右大将定国家の屏風に
詠人 たたみね
原文 知止利奈久 左本乃可者幾利 多知奴良之 也万乃己乃者毛 以呂加者利由幾
和歌 ちとりなく さほのかはきり たちぬらし やまのこのはも いろかはりゆく
読下 千鳥なくさほの河きり立ちぬらし山のこのはも色かはり行く
解釈 千鳥が鳴く佐保川に秋の霧が立つようです、山の木の葉も色変わり行くようです。