歌番号 157 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 天毛堂由久 宇恵之毛志留久 於美奈部之 以呂由部幾美可 也止利奴留可奈
和歌 てもたゆく うゑしもしるく をみなへし いろゆゑきみか やとりぬるかな
読下 手もたゆくうゑしもしるく女郎花色ゆゑ君かやとりぬるかな
解釈 手もだるくなるほどに植えた効果もあって、女郎花の花色に美しさゆえに、それに惹かれたのか、貴方が私の屋敷に泊まってくれました。
歌番号 158 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 小野宮太政大臣
原文 久知奈之乃 以呂遠曽堂乃武 於美奈部之 者那尓女天川止 比止尓可多留奈
和歌 くちなしの いろをそたのむ をみなへし はなにめてつと ひとにかたるな
読下 くちなしの色をそたのむ女郎花はなにめてつと人にかたるな
解釈 クチナシ色を頼りにする、その言葉の響きではありませんが、口無し=他言無用を信じて、美しく咲いている女郎花、その言葉の響きではありませんが、美しく花盛りの女郎である貴女、この私との密会は他言無用ですよ。
歌番号 159 拾遺抄記載
詞書 をみなへしおほくさける家にまかりて
詠人 よしのふ
原文 遠美奈部之 尓保不安多利尓 武川留礼者 安也奈久川由也 己々呂於久良无
和歌 をみなへし にほふあたりに むつるれは あやなくつゆや こころおくらむ
読下 女郎花にほふあたりに睦つるれはあやなくつゆや心おくらん
解釈 女郎花が色鮮やかに咲いている辺で私が親しく睦みますと、貴女は不思議に露気の姿になってしまうでしょうか。
注意 女郎花の意味を女性の体、それも女性の花=陰部と考えますと、夜の愛撫の場面を詠う非常にエロい歌になります。
歌番号 160
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 之良川由乃 於久川万尓須留 遠美奈部之 安奈和川良波之 比止奈天不連曽
和歌 しらつゆの おくつまにする をみなへし あなわつらはし ひとなてふれそ
読下 白露のおくつまにする女郎花あなわつらはし人なてふれそ
解釈 白露を置く、それをきっかけに貴方はする、その女郎花、ああ、戸惑ってしまいます、貴方、それほどに花に手を触れないで。
注意 新日本古典文学大系では露と女郎花を夫婦と見立てています。ただ、女郎花の意味を女性の体、それも女性の花=陰部と考えますと、愛液が溢れる風情と愛撫による地震の体の反応に戸惑う様を詠う歌とも取れる非常にエロい歌になります。歌番号159との組歌でしょうか。
歌番号 161 拾遺抄記載
詞書 嵯峨にせんさいほりにまかりて
詠人 藤原長能
原文 飛久良之尓 美礼止毛安可奴 遠三奈部之 乃部尓也己与飛 多比祢之奈末之
和歌 ひくらしに みれともあかぬ をみなへし のへにやこよひ たひねしなまし
読下 日くらしに見れともあかぬをみなへしのへにやこよひたひねしなまし
解釈 一日中見ていても飽きることが無い女郎花、野辺にあって、今宵はここで旅寝でもしようか。