歌番号 187
詞書 延喜御時の御屏風に
詠人 つらゆき
原文 可世左武三 和可々良己呂毛 宇川止幾曽 者幾乃志多波毛 以呂万佐利个留
和歌 かせさむみ わかからころも うつときそ はきのしたはも いろまさりける
読下 風さむみわかから衣うつ時そ萩のしたはもいろまさりける
解釈 風が寒くなったので私の新調する唐衣も肌さわりを良くするために砧で打つ季節になりました、そのような季節に萩の下葉も一層に色合いが良くなりました。
歌番号 188
詞書 三百六十首の中に
詠人 曾禰好忠
原文 加美奈比乃 美武呂乃也万遠 个不美礼者 志多久左加遣天 以呂川幾尓个里
和歌 かみなひの みむろのやまを けふみれは したくさかけて いろつきにけり
読下 神なひのみむろの山をけふみれはした草かけて色つきにけり
解釈 神奈備、その神が寄り付くと言う三室の山を今日眺めて見ると、梢の葉だけでなく木々の下葉にまで色付いて来ました。
歌番号 189
詞書 題しらす
詠人 大中臣能宣
原文 毛美知世奴 止幾者乃也万者 不久可世乃 於止尓也安幾遠 幾々和多留良无
和歌 もみちせぬ ときはのやまは ふくかせの おとにやあきを ききわたるらむ
読下 紅葉せぬときはの山は吹く風のおとにや秋をききわたるらん
解釈 その名のように紅葉をしないと言う、常緑の常盤の山は吹く風の音に秋の季節を聞き別けるのだろうか。
歌番号 190 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 大中臣能宣
原文 毛美知世奴 止幾波乃也万尓 寸武之可八 於乃礼奈幾天也 安幾遠志留良无
和歌 もみちせぬ ときはのやまに すむしかは おのれなきてや あきをしるらむ
読下 もみちせぬときはの山にすむしかはおのれなきてや秋をしるらん
解釈 その名のように紅葉をしないと言う、常緑の常盤の山に住む鹿は、自分自身が妻を呼ぶために鳴くことで秋の季節を知るのだろうか。
歌番号 191 拾遺抄記載
詞書 題しらす
詠人 よみ人しらす
原文 安幾可世乃 宇知不久己止尓 多可左己乃 遠乃部乃之可乃 奈可奴日曽奈幾
和歌 あきかせの うちふくことに たかさこの をのへのしかの なかぬひそなき
読下 秋風の打吹くことに高砂のをのへのしかのなかぬ日そなき
解釈 秋風が打ち吹くごとに、高砂の尾上に住む鹿の妻を呼んで鳴かない日はありません。