読書日記

いろいろな本のレビュー

反ポピュリズム論 渡邉恒雄 新潮新書

2012-10-11 13:59:26 | Weblog
 中身は橋下徹大阪市長の政治手法に対する批判である。氏は読売新聞の会長で、巨人軍のオーナーとしても有名。最近こわもての経営者として報道されることが多いが、本来はまともなインテリのジャーナリストである。その渡邉氏が橋下市長の「政治には独裁が必要」「選挙で通れば白紙委任されたも同然」という強気の発言をヒットラーにたとえて批判している。
 一読して至極まっとうな内容だ。ヒトラーの全権委任法は後の第二次世界大戦、ユダヤ人のホロコーストの悲劇を生みだした。当初ドイツ国民はヒトラーを侮っていた節があり、まさかあいつに大それたことができる筈がないという油断があったことは確かである。大阪のタレント弁護士出身の市長に現に大阪の人間は白紙委任状を提出したも同然の状態だ。「私は一市長にすぎませんよ」という言葉を信じてはいけない。「4年の実績を見ていただいてもしだめなら次の選挙で落としてもらったらそれでいいわけです」という言い方をよくしているが、その4年の間に民主主義を根底から崩す行為をしないとも限らない。有権者はそこを厳しい目で見る義務がある。「衆愚の王」に要注意だ。
 並行して『日本破滅論』(藤井聡・中野剛志 文春新書)を読んだが、今の日本の政治の問題点を正確にえぐり出している。ここでも橋下市長批判が展開されているが、私が強い印象を受けたのは、中野氏の「政治家は政策よりも人品骨柄」という意見だ。これは本質をついている。橋下市長を持ち上げるメディアは多いが、国の指導者としての「人品骨柄」を備えているかというといささか疑問である。中野氏は全否定している。ツイッターでとことん気に入らない者を攻撃(口撃)する手法はどうみても下品だ。中野氏はこの攻撃の被害者である。
 最近、現職の国会議員を寄せ集めて「日本維新の会」を立ち上げて国政に進出することを決めた、橋下市長であるが、民主党と自民党の党首選挙の報道が余りに盛りあがったため、その存在がすっかり影が薄くなってしまった。世論調査での支持率も下降して、行き先不安の状況だ。所謂政党の体をなしていないことが大きな問題点と言える。折しもノーベル医学・生理学賞を山中伸弥教授のインタビューが連日テレビで放送されているが、その謙虚な受け答えは日本国民を感動させるに十分な素晴らしいものだった。この真摯な態度をみるにつけ「日本維新の会」の党首の軽薄ぶりが際立ってしまう。こころすべきである。もしノーベル文学賞に村上春樹氏が選ばれたら、また大変な盛り上がりになることだろう。そうなれば、また山中教授とは違ったインタビューが放送され、連日人々に感動を与えることだろう。そうなれば、「維新の会」党首WHO?ということになる可能性が高い。メディアは移り気であることをその時実感せざるえないだろう。メディアをうまく使ってのしてきた人間にとっては痛いことだ。

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