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唐代の人は漢詩をどう詠んだか 大島正二 岩波書店

2009-09-13 15:46:08 | Weblog

唐代の人は漢詩をどう詠んだか 大島正二 岩波書店



 漢詩ブームであるらしい。これはNHKの「漢詩をよむ」で石川忠久先生が中国語による朗読を披露されたことによると思われる。漢詩は訓読による朗読が普通だが、これを中国語で朗々と読まれたことで、人気が出たのだ。石川先生は六朝文学の研究家で、特に陶淵明について詳しい。日本漢文教育学会の会長をされている。気さくな人柄で人気が高い。NHKでの漢詩の講義も洒脱で楽しかった。
 詩吟でも歌われる場合訓読形式だが、中国語による朗読も魅力的だ。ただ高校などでは漢文専門の教員が少ないので、中国語のできる人は少なく、教科書の漢詩を中国語で朗読できる人はすくない。したがって漢詩の授業では押韻は指導するが、平仄までは指導しない。一部の私学とか国立の付属高校ではやっているかもしれないが、少数である。最近独力で漢詩普及の道を開拓されている鈴木淳次という人がいる。愛知県の県立高校の教員をされているが、「漢詩を創ろう」と題するインターネットのサイトを十年前に開設、今やヒット数は三十五万を超えている。高校では通信制で漢詩創作講座を担当されている。またリヨン社から二冊の漢詩創作の本も出されている、非常に奇特な方である。最近の漢文はセンター試験に出題されるからというためだけに存在している感がなきにしもあらずだが、こういう先生がいることは漢文学会にとっても誠に心強い。
 本書は漢詩を現代中国語ではない唐代の発音に復元してみようということで、韻の説明から始まって、韻書の紹介、平仄の説明などを問答形式で分かりやすく説明している。中原音韻の復元は高度な言語学の知識が必要だが、カール・グレンなどの説を援用して初学者にも理解できるように努めている。高校の国語の先生にはぜひ読んでいただきたい。そうすれば読んで訳すだけの授業から脱却できるかも知れない。
 

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