読書日記

いろいろな本のレビュー

バカ丁寧化する日本語 野口恵子 光文社新書

2009-09-05 22:25:42 | Weblog
 最近ばか丁寧な言い回しがはびこっているが、その代表が「させていただく」だ。これをやたら使いたがる人が多い。第一章「させていただきたがる人々」はそれに冠する論考だ。一見謙譲語と見られないこともないが、似て非なるものだ。私は個人的には好まない。何か卑屈な感じがするからだ。ある選挙の立候補者が選挙演説で「皆様にお訴えさせていただきたく云々」と語ったという例が挙げられいるが、丁寧にものを言ったという実感が話者にはあるのだろう。しかし、明らかにおかしい。こんな候補者、まともな日本語を使おうとしている選挙民からは顰蹙を買って落選するに違いない。
 消費者保護法の制定以後、サービス業の世界でもやたら敬語が増えた気がする。これはクレームの増大と相関関係がありそうだ。「様」がその一例だ。「~さん」が「~様」に駆逐されたと言っていい。悪貨が良貨を駆逐するように。敬語を使う場合は著者も指摘するように、心がこもっていなければ意味がない。店員がお客に背中を向けて「ありがとうございました」と言っても意味はないのだ。したがって、敬語の、それも正しくない敬語の乱発は現代の空疎な人間関係を逆に浮き彫りにしていると考えられ、喜ばしい現象ではない。マニュアル化された敬語は使う側の想像力で補わないと、客に不快感を与えてしまい、リピーターを取れなくなってしまう。サービス業界はこれを肝に銘じなければならないだろう。人を、状況を見て的確に使うことだ。さわやかな敬語を聞いたときの爽快感は例えようもない。
 私個人は、尊敬語と謙譲語はそれぞれ「為手尊敬」と「受け手尊敬」ということでしっかり学ばせればよく、これで古文と同様、二方面に対する敬意も理解できるし使えるようにもなると思う。

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