読書日記

いろいろな本のレビュー

韓国とキリスト教 浅見雅一・安廷苑 中公新書

2012-10-20 11:12:58 | Weblog
 韓国では宗教人口の過半数を、キリスト教信者が占めているが、これは日本と大きな違いである。何故これほどキリスト教信者が多いのかをレポートしたのが本書である。実際、韓国に行くとキリスト教会が多いことが分かる。屋根に十字架が懸っており、それが夜になるとネオンのように光るのだ。これは日本にはない光景である。教会とネオンの十字架は我々日本人の感覚ではしっくりこない。何か安っぽく見えてしまう。実際、韓国教会がほぼキリスト教化した巫教の宗教であるという指摘は前からあった。現世利益を求める大衆の宗教心と欲求を満たすものとして歓迎され広がっていったというものである。
 本書では十八世紀以降の朝鮮半島における受難の布教開始から、世界最大の教会を首都ソウルに置くに至った現在までを追っている。その中で現在のように韓国社会にキリスト教が深く浸透した要因を以下の四点にまとめている。
 ①韓国の原信仰が一神教的要素を持っていたので、一神教であるキリスト教を受容する下地となった。
 ②朝鮮王朝の朱子学の理気二元論にはキリスト教の世界観に類似する点があった。
 ③儒教の倫理を重視する姿勢が、キリスト教の倫理への接近を容易にした。
 ④植民地時代にキリスト教が抗日独立運動の精神的支柱となった。
 ①は巫教の宗教であるという説と重複するものだ.②については理性を前面に打ち出し、儒教的「理」を継承したものを「理のキリスト教」、感性を前面に打ち出し、シャーマニズムや仏教を吸収したものを「気のキリスト教」と呼ぶという小倉紀蔵氏の説を紹介している。③について、朝鮮王朝という儒教社会で成立した東学もしくは天道教と呼ばれる宗教との関連で説明しているところが目新しい。④は感覚的に理解できる。
 以上、韓国におけるキリスト教受容の歴史は韓国の裏面史というべきもので、異文化理解の重要なカギになる。

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