タイトルのアルフアとは狼の群れのボスのことらしい。基本的に群れの中で交尾できるのはこのアルフアで、交尾中に他のオスの妨害にもめげず戦い抜く姿にインスパイヤーされた男の生き方を描く。男の名前は真田信繁で将棋のプロを目指す。家庭的には不幸で、母は男を作って出奔、父は育児を放棄、伯父の家に預けられ苦労の連続。将棋は父から指導を受けてたしなみはあったが、ある日、謎の真剣師に出会って将棋の魅力にはまりプロ棋士になりたいと思うようになった。真剣師とは掛け将棋で生きている人のこと。プロ棋士は簡単になれるのものではないのだが、現世の不幸を払拭してこれ一本に賭けられるものとして意識されている。狂言回し役が、新聞記者の秋葉隼介。自身は事件記者から将棋観戦記者に配置換えを食らい、腐っているという設定だが、新聞記者としての体験に負うところが多いのだろう。真田は33歳で、年齢制限で本来ならプロ棋士の養成機関である奨励会の三段リーグに参加できないが、特別に編入試験を受けて奨励会員の二段・初段7人と戦って6勝すれば合格できる。結局初戦は敗れたが、あと6連勝するという小説ならではの奇跡の展開を見せる。
しかし、合格しても三段リーグを抜けるのは簡単ではない。したがって無事プロの4段になってめでたしめでたしという話ではないので、それが却ってこの小説に陰翳をもたらしている。喜怒哀楽、幸・不幸、運命的な出会い等々、ある限りの要素を全部つぎ込んで書いた感じの小説だ。腰巻には「第五回小説現代長編新人賞選考会満場一致の完全受賞作」とある。確かによくまとまっているが、読んでいると次の展開が予想できてしまって意表をつくということがない。2作目が難しいだろうと思う。実は真田信繁は作者の創作ではない。モデルは瀬川4段という人物で、もと奨励会員だ。年齢制限で大会後、アマ棋界で大活躍しプロにも互角の勝負ができるほど腕をあげて、編入試験で四段になった。彼は退会後、大学に行きサラリーマンになった。本書はそれをデフオルメして書いている。そのほうがドラマになりやすいことは確かだ。棋士の次は何で勝負に出てくるのか、お楽しみ。
しかし、合格しても三段リーグを抜けるのは簡単ではない。したがって無事プロの4段になってめでたしめでたしという話ではないので、それが却ってこの小説に陰翳をもたらしている。喜怒哀楽、幸・不幸、運命的な出会い等々、ある限りの要素を全部つぎ込んで書いた感じの小説だ。腰巻には「第五回小説現代長編新人賞選考会満場一致の完全受賞作」とある。確かによくまとまっているが、読んでいると次の展開が予想できてしまって意表をつくということがない。2作目が難しいだろうと思う。実は真田信繁は作者の創作ではない。モデルは瀬川4段という人物で、もと奨励会員だ。年齢制限で大会後、アマ棋界で大活躍しプロにも互角の勝負ができるほど腕をあげて、編入試験で四段になった。彼は退会後、大学に行きサラリーマンになった。本書はそれをデフオルメして書いている。そのほうがドラマになりやすいことは確かだ。棋士の次は何で勝負に出てくるのか、お楽しみ。