読書日記

いろいろな本のレビュー

第三帝国の興亡2 W・L シャイラー 東京創元社

2009-07-05 21:06:22 | Weblog
 五巻の内の一、二巻について。ヒトラーのナチス結成からチェコスロバキア併合までのプロセスを描く。著者は言う、ナチスほどいかがわしい人物を多数引き寄せた党はドイツではほかに無い。ポン引き、人殺し、ホモセクシュアル、アル中、ゆすり屋などの混成群が、巣篭もりでもするかのように党のまわりに集まった。しかし、ヒトラーは彼らが自分に有用である限りは気にもとめなかった。まともな幹部が犯罪者や、とくに変質者を運動から放逐して欲しいという要求が出たが、ヒトラーは、あっさりとこれを拒否した。1925年2月26日の「フエルキッシャー・ベオバハター」に載せた論説「新しきはじまり」でこう書いている。「部下の人間性を向上させるとか、まして部下の宥和をはかるとかは、政治的指導者のすることではないと思う」と。
 ナチスの暴力性・凶暴性を遺憾なく説明した部分で、この政党が、ワイマール共和国の衰退に乗じて、ドイツ国民の体内にがん細胞のように増殖して言ったのである。それは稀代のペテン師ヒトラーの存在なくしては権力の奪取はあり得なかった。死に体のヒンデングルク大統領に付け込んで、野望を実現する様は、自民党の足元を見て、自分を総裁にしろといっているどこかの国の知事の姿を彷彿とさせる。あの男の目は絶対善人のそれではない。自民党が戦略を誤って彼を総裁ならずとも大臣なんどにすれば、民衆の暴走は止められなくなって、地方分権のお題目のもとに完璧に我が国の政治は崩壊する。
 ヒンデングルクから政権を奪取したヒトラーは宗教と学問に介入して弾圧を強める。次に労働組合の破壊だ。そしてベルサイユ条約の廃棄とロカルノ条約の締結。この間、イギリスはヒトラーの演説に騙され続け、凶暴な独裁者であることを見抜けなかった。フランスも同様だ。そしてオーストリア併合から、チェコの消滅と第二次世界大戦への道を突き進むのだ。この間のヒトラーは誇大妄想者というべき状態で、チャップリンの「独裁者」そのままの世界が出現する。惜しむらくは、イギリスのチェンバレンの弱気がヒトラーを増長させたと言うことである。チェコの併合を唯々諾々と許してしまったことはまことに遺憾である。
 そして、これと並行してユダヤ人に対する弾圧が始まる。人類最大の悲劇の幕が切って落とされたのだ。危険な独裁者の登場を阻止するのが民主主義の基本だが、現代の選挙制度はそれを食い止めることができない。民主主義はとるに足りない者の意見を十分聞くという政治システムだが、選挙で代表者を選ぶということで、これは寡頭政治と結果的には同じになる。民衆のレベルに応じた代表者が選ばれてしまう危険性を阻止できない。いま日本で起こっていることはまさにこれだ。あの増長した知事をたたきのめすことは選挙では不可能だ。「私が出れば、自民党は負けない」という言葉を、日本国民はどう評価するつもりか。常識的にはたわごとと一笑に付してそれでおしまいということだが、本当にそうなったときの事だ。今のマスコミ誘導に載せられて愚民は知事が立候補した自民党を勝たせてしまうかも知れない。早く日本を脱出した方が良いかも知れぬ。アーメン。

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