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一度は拝したい奈良の仏像 山崎隆之 学研新書

2009-07-12 10:05:36 | Weblog

一度は拝したい奈良の仏像 山崎隆之 学研新書



 古都奈良の有名な仏像の写真入り解説だ。来歴・創作法など懇切丁寧に解説されている。東京で展覧会のあった、興福寺の阿修羅像。そのあまりに美しい異形の鬼神に多くの見学者が訪れたが、なぜ阿修羅像を少年像として作ったかという点に関して新しい説が提示されている。それは、光明皇后は仏教の熱心な信者だったが、たとえ皇后であっても、女性の身では成仏できないことになっており悲観していた。そのとき、『金光明最勝王教』の中に女性の成仏を説く部分があり、それが皇后の心を捉えた。また『法華経』では「変成男子」(へんじょうなんし)を説く。すなわち、女性は男性に生まれ変わることによって、はじめて成仏への道が拓けるというのだ。皇后はこの「変成男子」を目指し、その変成すべき理想の男子像を群像の中に忍ばせておきたいと考えたというものだ。光明皇后もなかなか面食いだったということがわかる。
 もう一つ個人的に懐かしく感じたのは、中宮寺の菩薩半か像(弥勒菩薩像)だ。四十数年前、父と父の友人のM氏(お寺めぐりが趣味)に連れられて、法隆寺と中宮寺に行った。その頃はこの弥勒菩薩像は目近に拝観することができた。尼僧の案内で中に入ると、菩薩の畳敷きの座敷風のところに鎮座ましますお姿は誠に崇高で、こどもの心にも感動を覚えたことを昨日のように思い出す。初夏の頃で、風鈴が涼しげな音を立てていた。そこは外界とは隔絶したゆったりとした時間が流れていた。まさに不易なものにつながった感動と言える。そのときを回想して一首。
    風鈴にかしげた顔の御姿 仏はいます飛鳥の代から

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